取り外される、おおきなフグちょうちんに馳せる思い出「づぼらや」 | じきの食歴

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世の中には、美味しいいもので溢れている。
そんな美味なる料理やお酒の記録を食の歴史として記しておこう

一見すると普通のカツ丼だ。カツは、1枚の大きなものではなく、揚がったものが3枚乗せられている。ヒレかつ丼のようにも見えるが、そうではない。
その中の1枚を箸でつまみあげると、その断面からは白身の魚が揚げられていることがわかる。
この白身魚の正体は、「ふぐ」である。
「ふぐカツ丼」。この店のあまり知られていない名物料理である。店頭のディスプレイにも、この品の名前は出ていない、知る人ぞ知る料理。
溶いた卵に、甘味より出汁の旨味を前面に出した丼たれと、そこにたっぷりのネギを入れてふぐカツを煮て包み込む。丼の上に載せたら、刻み海苔をハラリとかける。
なんて上品なかつ丼なんだろう。
一緒に出てくる赤みその味噌汁とおしんこは箸休め的な存在ではなく、これらの味よりも控えめでたんぱくな河豚の味の方が、箸休め的な存在にすら思えてしまう。
ああ、滋味深くカツ丼の概念を変えられてしまうような味わいだ。

今回は、他にもふぐ皮せんべいというのも頼んでみた。
これは、せんべいみたいに焼くのではなく、唐揚げのように揚げたものらしい。
下味はほとんどついていないので、薄味なのだが、不思議といつまでもポリポリと食べてしまう味だ。
これが日本酒に実にあう。

そんな感想を、下記のニュースを見て思い出した。
これを食べたのは、去年の4月。
大阪にある大きなフグのちょうちんと言えば、ああ、あの店かとわかる人も多いだろう。
そう、大衆向けの河豚料理の店「づぼらや」。
その道頓堀店にて出されていた料理。
店の窓辺の席の眼科には道頓堀川が流れており、その向こうには、ドン・キホーテが建っている。
コロナの存在等知らない昨年の春、道頓堀川沿いには、多くの若者たちがたむろし賑わっていた。
それから1年。コロナによる影響で2020年4月から営業自習をしていたのだが、その2か月後の6月12には、今後も回復は難しいと判断し営業停止することにすると発表が行われた。
あのフグちょうちんが無くなることは、もちろん寂しいことであるが、自分としては、このふぐカツ丼が食べれなくなってしまったことの方が、より一層胸にささった。


づぼらやフグ「ほな!さいなら」…大阪・新世界
https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20200903-OYO1T50043/
大阪・新世界にある老舗フグ料理店「づぼらや」のフグの巨大ちょうちんが3日未明に取り外され、感謝の言葉とともに「ほな! さいなら」と記された垂れ幕が掲げられた。

 

 

 

づぼらや 道頓堀店ふぐ / 大阪難波駅日本橋駅近鉄日本橋駅
昼総合点★★★★ 4.0