元SMAPの稲垣吾郎さんと香取慎吾さん監修のビストロ「BISTRO J_O」 | じきの食歴

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世の中には、美味しいいもので溢れている。
そんな美味なる料理やお酒の記録を食の歴史として記しておこう

元SMAPの香取慎吾さんがディレクションしているアパレルショップ「JANTJE_ONTEMBAAR」のフレンドショップという位置づけで、稲垣吾郎さんがディレクションを務め料理やワインをセレクトして出すレストラン「BISTRO J_O」が、10月4日、LOFT等の入る銀座Velvia館の9階にオープンした。
以前は、ひらまつ系のフレンチレストラン「アイコニック」が入っていたフロアーだ。
店名についてる「J_O」とは、オランダ語でやんちゃとおてんばから一字ずつ取ったもので、香取さんのアパレルブランドの頭文字でもある。
店は、80名ぐらい入る大箱で、店内には香取さんセレクトのアート作品も飾られており、モダンな感じに仕上がっている。稲垣さんや香取さんの意見もかなり取り入れられているのだろうが、運営委託されているXEXグループらしい内装も見受けられた。
また、特徴的なのは、窓側にはお一人様用の席も用意されていることだ。
隠れSMAPファンな人にも来てもらいたいということなのだろう。
窓辺からは銀座のネオンも観れるので、遠方からやってきた人にはいい思い出にもなるかもしれない。
で、この店が話題となっている理由の一つに、『BISTRO SMAP』で出していた料理をベースにした料理の数々が出されるということで、SMAPファンのみならず、様々な業界からの関心を集めている。
ご存じのように稲垣さん、香取さん、草なぎさんの3人は、2017年9月にジャニーズ事務所を退所し、やはり同様に大所した元SMAPのチーフマネジャー飯島三智さんをマネージャーとして「新しい地図」を立ち上げている。
そんな確執がありながらも、今回出される料理には、SMAPに残った中居正広さん、木村拓哉さん、そして1996年にグループを脱退した元メンバーの森且行さんを連想させるような料理も含まれているということで、ネットでも話題となっていた。

そんな話題の店だが、運よくオープン4日目の予約をいただくことができた。
予約とコースは事前にネットから予約するようになっており、ディナーは、4500円、8500円、12000円の3種類ある。ただし、12000円のコースは個室のみとのことで、今回は8500円のコースを頼んでおいた。内容は、毎月変わる予定らしい。
メニューは、下記のようなもの。

■スペシャルディナーコース 8500円(税込み)
・今月の一皿 (ビストロスペシャル)
・今月のサラダラインナップより一品
※BISTRO J_Oピッツァorブレッド
・シェフお勧めのディナーメニューより一品
・ディナーメニュー(魚料理)より一品
・ディナーメニュー(肉料理)より一品
・BISTRO SWEETSを含む今月のデザート3種盛り合せ
・コーヒーまたは紅茶・ハーブティー
※オープン記念のウェルカムシャンパン

2皿目のサラダ以降は、プリフィクス形式で好きな料理を選べる。
最初の1皿目は、事前情報開示され、ファンの間で話題となった『茶碗蒸し仕立てのクラムチャウダー』。
茶碗蒸しの上にクラムチャウダーがかけられたもので、この料理法は、木村拓哉さんがよく用いてたもの。で、クラムチャウダーは、中居正広さんの大好物料理らしい。
そして、これには途中で焼きウニと大葉とすだちを後から入れるようになっている。
このすだちも、木村拓哉さんが好きな食材とのこと。
最初の1品は、残ったSMAPメンバーへ感謝をささげるものではないかというファンの声もあった。
また、トレーに乗せて配りに来たBISTRO J_Oピッツァorブレッドには、海老パンもあり、これはSMAPを脱退した森且行さんが、96年5月27日に最後の出演となった『BISTRO SMAP』で出した料理だ。
これで、過去を含めたSMAPのメンバーが全員揃うことになる。
だが、このような感動的なストーリーは、店では語られていない。
2年前の脱退騒動があり、語ることが出来ないからだ。

うん、最初の1皿は美味しかった。途中で入れるすだちによる味の変化も素晴らしい。
焼きウニが冷め切っていて干からびていても、そんなのは些細なことだ。なんといっても、元SMAPメンバー監修の料理だ。
ドリンクの方もワイン好きな稲垣さんセレクトのことだけあり、色々な価格帯の美味しいワインが、エコノミー、ビジネス、ファーストと価格帯によって分けられオンリストされている。稲垣さんらしい演出だ。
ちなみに、注文したワインは、ボトルで「甲州テロワール・セレクション 祝」と「リボッラ・ディ・オスラヴィア」。
どちらも旨かった。
うん、いいんじゃないか?

席についている人達は、皆一様に瞳を輝かせ、あの「BISTRO SMAP」をこれから体験できるのかと期待に溢れていた。
まだ皆笑顔でいる。

料理紹介の途中だが、今回同席してもらったメンバーを紹介しておこう。
タレントプロダクションも行うマジシャン男性、12社のゲーム会社の取締役等をする魔女、裏千家教授でありながら能楽師もする女性、女性向け雑誌の敏腕女性編集長、住所非公開の和食の店の大将、映像コンテンツ制作&リサーチャーの女性、フードコーディネーター&飲食店顧問の女性といった、なかなか面白い顔ぶれ。
表現者、クリエイターの集まりは、なんでも前向きに捉え、ささいなことを笑いに変える。
ほんと、そんなメンバーで良かったと、2品目の料理から思えるようになった…

最初に書いておく。
これから書く内容は、自分の紹介文としては珍しく、かなりネガティブな部分が多い。
だが、いずれも改善できる内容なので、もしこれを関係者が目にすることがあったら、改善に取り組んでいただきたい。
そういう思いであえて書いておく。

上記のピッツァorブレッドは、海老パン含め6種類ぐらいあり、お代わり自由となっているのだが、各テーブルをまわる間にいくつか種類が無くなっており、次持ってきますといいながら持って来なかったり、お代わりを勧めるテーブルとそうでないテーブルがあったりした。
サーブする順番や担当のテーブル、配膳するタイミングを調整すれば改善される内容だろう。
また、厨房から遠い自分達の席にたどり着くまでにピザは冷めてしまっており、硬いチーズを噛みしめることとなったのも残念だった。

そして、プリフィクスのメニューを選ぶ。
一人づつサラダ、お勧め、メインの魚、メインの肉を決めてスタッフに伝える。
そして、メニューは回収される。
これが、後々困ったことになってくる。

自分達のテーブルだけで4回あったのだが、注文したメニューを間違ってもって来られる。店内を見渡してると、他のテーブルでも同様のトラブルが多発している。
一人づつ確認しているから、誰に何を出せば良いのか把握できているはずなのだが、「こちらの料理は、どちらの方でしょうか」と聞いてくる。
色々と選べるのはいいけれど、メニューが多すぎてスタッフですら混乱してしまっているようだ。
また、メニューを回収されているので、こちらも料理名をすぐには言えず、何を注文していたのか思い出せないことがある。こういったやりとりで時間が過ぎていく。

サラダは、自分達のテーブルは3種類に分かれた。
自分が食べたのは、『Meetミートヴァリエーションサラダ』。
シャルキュトリーがいっぱい盛られたサラダだったのだが、これはボリュームもあり旨かった。少々野菜が乾燥していたので、作り置きっぽい感じもしたが、この人数と値段を考えるなら仕方のないことだろう。

お勧め料理は、麺料理かご飯から選択する。自分は、『トリュフきのこご飯』を選択。
ご飯は、冷め切っており、表面が乾燥した状態で出て来た。
極薄にスライスされたトリュフもご飯の水分を吸ってふにゃふにゃになっている。
もちろん、香りも飛んでしまっている。
ちょっと味の調整として、トリュフ塩やトリュフオイルを出す直前にかけるだけでも、かなり印象は違っていただろう。
他の人が注文していたパスタは、冷えて固まり変色し始めていた。

この後、皿を下げられてから30分以上次の料理が出てこない。
あまりにも料理が出てくるのが遅いので、マネージャー兼ソムリエ風の方に「だいたい何時間ぐらいで一通りの料理が出るのですか」と尋ねたら「およそ2時間で全ての料理が出ます」と言われたのだが、まだメイン2皿とデザートが出てない時点で2時間経過していた。
結局、全ての料理が出てくるのに3時間以上かかっていた。
地方から「あのBISTRO SMAPの料理を食べに行きたい!17:30スタートだから、21時の新幹線に乗れば帰れるよね!」と思って行ったら、料理の途中で退席するか、そのまま東京に宿泊しないといけなくなってしまう。
幸い、すぐ隣に無印良品のホテルがあるので、そこに泊まるのもまた一興かもしれないが…

またその間、稲垣さんのワインも売りなのだろうに、ワイングラスが空になってても、こちらが呼ばなければ何も進めに来ない。客に無理にお酒を進めないというシステムなのだろうか?
とりあえず、グラスの空いた客へ水を注ぎにまわる等すれば、お酒のお代わりを注文できるのだが、一向に周りに来ないし、声をかけてもなかなか来てくれない。
忙しいのかというと、スタッフはキッチンの入口にたむろしている。おそらく新人が多く、何をすればいいのか、わかっていないのだろう。
これは、今後スタッフが育っていけば解決するのかもしれないが、初訪の印象としては、あまり良くない。

自分達はまだ会話できて良かったけれど、1人用の席の人達は、こうも時間がかかってしまっては、いくらスマホで暇つぶしをしても時間を持て余してしまう。
実際、一人席の人達は途中から肩を落とし、窓の外に見えるネオンを見ながら、どこか放心状態のようになっていた。

そして、ようやく出て来たメインの魚料理。『鮪レアカツ 焼き茄子とフレッシュトマト餡』を選択。
時計を見ると、22時を過ぎている。23時には、この店閉店らしいのだが、これからメイン2皿とデザートが待っている。
このペースで、本当に最後まで出るのか、食べてる側までドキドキしてしまう(苦笑)

で、鮪のカツだが、筋が多すぎて出されたナイフでは切ることができず、また火の通ってない血合いの部分も含まれており、食べきることができなかった。鮪の処理方法がちゃんと伝わっていないのか、時間がなくてそこまで手が回らなかったのか。
オマール海老と真鯛それぞれの皿は、実際に食していないのでノーコメント。

そして、メインの肉料理。
『北海道十勝どろぶたのグリル 熟成黒酢ソース』
『スパイシーチキン BISTRO仕立て』
『松坂牛のビステッカ 本山葵』
の3種類から選ぶ。これは、皆でシェアして全て少しづつ味見させてもらった。
BISTRO SMAPで評判が良かったというチキンは、化学調味料入りの塩コショウの味が強く、飲み物無しでは少々辛い。事前に塩コショウに香草をまぶして置いておけば、しっかりと中まで味と香は染み込むのだが、直前にまぶしてフライドにしているのだろう、肉の方には味が染み込んでいなかった。
豚のローストは、単体では旨い。ただ、添えられていた南瓜のピューレは甘すぎて、折角の豚の油の旨みを壊している。色味重視で添えられていたのだろうか。
同様に松坂牛に添えられたビーツのソースも塩味が全然足りてなくて味がせず、ソースとしての機能を果たしていない。
ひょっとしたら、調理担当が急病とかで調理場が混乱でもしてたのだろうか?
メニューの監修は、服部栄養専門学校のスタッフが携わっているそうだが、ちゃんとレシピ通りに作られているのか、甚だ疑問だった。

自分達のテーブルは、こういうのもネタにして楽しみ、笑い声があがっていたのだが、ふと周りのテーブルを見ると、どのテーブルからも笑顔が消えていた。
ああ、自分達のテーブルは、なんとポジティブなメンバーなのだろう。
数々の難題を共にクリアしていき、結束を固めていくRPGのようだ。
オラ、なんだかワクワクしてきたぞ(謎)

そしてデザート。
コンビニスイーツを3種盛り合わせたかのよう。
明らかに店内で作ってないもので、保存料の香りもする。
ミニロールケーキには、J_Oのキャラクターの刻印が入っていますと、嬉しそうに定員が言う。
皆苦笑する。
せめて最後のコーヒーは、楽しみたいと、ケーキに添えられていたミニローズの花びらを浮かしてみた。
ささやかな抵抗である。

と、数々の苦難に遭遇したのだが、それでも怒ってる客は居ない。
それは、稲垣さんや香取さんに対する愛情が、怒りを、達観もしくは悟りの境地へと昇華させていたからかもしれない。

この店のオープンが発表された際、稲垣さんが「食を通じてお客様が笑顔になれるような、僕自身のこだわりが詰まったお店になればいいなと思います。僕の夢がひとつかないます」とコメントしていたのだが、最初は笑顔だった客達が、席を立つときには厳しい表情となってしまっている現状を、稲垣さんはご存じなのだろうか。
オープンして間もないこともあり、不慣れそうなスタッフが多く、しかも大箱の店ということもあり、オペレーション等がまわっていなかったのだろう。
そういう意味では、あと半年、いや3ヶ月後に、どれだけスマートな営業ができるになっているのか、菩薩のような慈愛をもって見守っていたい。

 

 

BISTRO J_Oビストロ / 銀座一丁目駅有楽町駅銀座駅
夜総合点★★★☆☆ 3.0