その店の詳細は、ネット上にも存在しない「美味求真」 | じきの食歴

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世の中には、美味しいいもので溢れている。
そんな美味なる料理やお酒の記録を食の歴史として記しておこう

住所、連絡先非公開。食べログやRetty 等への投稿もNG。入店できるのは、有料の会員とその同行者のみという和食の店。
特別な理由等なければ、新規の会員も取っていないらしい。
今回、こちらのお店の常連であるK氏のお誘いで訪問することができた。
「美味求真」
この地にて営業を始め、すでに3年経つそうだが、ネットで検索しても、この店の詳細を見つけることはできなかった。
この店、どの辺りにあるということすら公表することを禁じられている。
駅からは少々離れた場所で、そこに店があるとは気づかないような場所に入口がある。
意を決して中に入っても、そこでさらに会員でないものの入店を拒否する文章が掲げられている。
そこを抜けて店内に入るとカウンター8席の空間が現れる。
席の後ろから壁までは、約1.5メートルぐらいの距離があり、かなり贅沢な作りとなっている。
この客席数でありながら、トイレも男性用と女性用が別々となっている。

卓上には、本日の献立が置かれている。極薄く削られた経木に書かれていた。全て手書きだ。
厨房角に置かれた日本酒の冷蔵庫には、新政や田酒の色々な種類や、珍しい日本酒が色々と取り揃えられている。
ここの店主は凝り性なのだろうなと察せられる雰囲気を醸し出している。
だが、堅苦しいという感じではなく、どちらかと言うと明るくフランクで喜んでもらえることに情熱を傾ける、そんな感じの店主だった。

そんな店主は、一人で仕入れから仕込み、調理に配膳を行う。
そんな彼の料理は、下記のようなものだった。

先付は、とろろにほやとオクラが入り、ゼリーを乗せたもの。
とろろがかなり強い。自然薯だろうか?
ねっとりしたもので胃に粘膜を張るのが目的かもしれない。
また、この中に入ってるほやが実に旨かった。

もう一つ先付が出て、今度はサラダだった。
とろ茄子に太刀魚、そこに生食用の南瓜が添えられている。

御椀は、鱧だった。いったん焼いたものをお吸い物にしているのか、非常に香ばしい。
これには、青だつ(ズイキ)に梅干しが添えられている。

お造り。右から順に、あずきはた、松笠鯛、かます。
松笠鯛とは、また珍しい鯛に出会えた。店主も、なかなか手に入らないものだと言う。

で、ここサプライズ。
なんと、真鯛の姿盛りを誕生日だからと出してくれた。しかもロウソクまでついている。

そして、焼き物として出て来た鮎が絶品だった。
なんと、骨を抜いた鮎に内蔵をつかったソースを塗って焼いたもの。
そしてその抜いた骨を焼いたものが敷かれている。
焼き鮎の骨抜きはよくあることだが、生の鮎の骨抜きは、かなり大変な作業だ。
そしてこれが、実に旨く焼けている。
身の方は、ほこほこと。骨の方も、カリカリとクリスビーに仕上がっている。
添え物の酢取小紫玉葱、白瓜雷干しの苦さと甘さもいいアクセントだ。

煮物には、すっぽん。これに、フカヒレと冬瓜が合わされる。
で、ここでまたサプライズ。
誕生日ですから…と言って取り出した大皿には、大きなフカヒレの姿煮が乗っていた。
誕生日サプライズの2回目である。

強肴としてちょいと一つまみ。のどぐろを焼いたものと、ウニの割り醤油漬けをのり巻に。
ウニは、殻付きの新鮮なものに秘伝の処理を施してから、昆布出汁の割り醤油に漬け込んだもの。
ウニの旨みが引き出され、これまた絶品。

お食事は、牛蒡の炊き込みご飯ですと言いながら、鰻を焼き始めた。
天然物とのこと。
白焼きにしてから、タレを塗るのがこちらのスタイルらしい。
それを、ざくざくと切って、牛蒡の炊き込みご飯に和える。
これ、牛蒡よりも鰻の方が多い。
献立に偽り有りだが、こんな偽りなら大歓迎。
白焼き等せずに、パリリと焼いた鰻が、白く甘いご飯に合う。そこに、牛蒡の良香り。
そりゃ、おかわりももらうでしょ。

デザートの甘味は、なんと自家製の赤柴の生タピオカを梅酒に入れたもの。
正直、タピオカそんなに好きじゃなかったのだが、これは旨い。
いや、酒が入っているからというわけじゃなく、いやまあ、それも理由の一つだが、梅の酸味にタピオカの甘味が合うのが驚きだ。
「これに、炭酸入れたいですね」と言えば、炭酸出してきて入れてくれた。
これも旨い。夏に最高だ。
こういう、臨機応変に客の希望に沿ってくれるというのは、実にうれしい。

そしてここでまた、3度目のサプライズ。
やっぱり誕生祝いにはケーキでしょということで、桃のムースケーキが出て来た。
いやはや、ここまでされると申し訳なく恐縮してしまった。

これらの料理に、飲み切れないぐらいのペアリングのお酒もついている。
今回のお酒は、

楯野川 無我
蓬莱泉 空
浅茅生 特別純米 滋賀渡船六号
八海山 特別純米原酒
満寿泉×ERI 純米吟醸 Pero
新政 頒布会酒
純米吟醸 健誠 二才の醸
雅楽代utashiro
新政 秋櫻 2017


世の中には、表に出てないが、こういった凄い店もあるものだと、益々食に対する探究心に火が灯ってしまった、52歳の誕生日ウイークの1日だった(笑)