辻原登・著「隠し女 小春」を読んで思ひ出しました | 古稀を過ぎたトリトンのブログ

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団塊世代よりも年下で、
でも新人類より年上で…
昭和30年代生まれの価値観にこだはります

 過日古稀を迎へ、時間が有り余れど、なにぶんにも先立つものが少なく無聊をかこつ身には「図書館」といふ親友は有難いものです。伊丹市に住む私は、かつて全国図書館コンクールのナンバー1に輝いた「ことば蔵」が徒歩10分の処に在るといふ地の利に恵まれてをるのです。

 

 もともと時代劇の大好きな私。「子連れ狼」を想ひ出させるタイトル「介錯人」といふ本の背文字を発見して以降、ここ最近は辻堂魁作品に嵌まつてをりました。おおかたの辻堂作品を読み尽くしたところへ、同じ「辻」の棚に並んでゐたのが「辻原登」氏のお名前でした。作品名は「隠し女 小春」…  何となく後ろめたい感じの そそられる題名なので、お借りして帰宅しました。

 度々個人的な話になりますが、私は小学生の頃「フランケンシュタイン博士・死美人の復讐」といふ映画を観て以来、人間どもに裏切られた女性(なぜか美女)が遂げる復讐劇をこよなく愛するのでございます。

 

 大手出版社で校閲を担当する主人公・聡の秘密。それはハンガリー製ラブドールの小春です。むろんこの小春は人形でありますが、歪(いびつ)ながら、人の心を持ち行動もできるといふ、この辺りは現実離れの内容ですが…。聡はバー経営者の千賀子といふセフレが居りながら、自宅では小春に安らぎを求める日々。ところがそのバーで知り合つた映像翻訳者の恭子が、偶然を装つて聡に近づき交際の末、将来を約束する間柄になります。さて、さうなると女性には理解されさうにない小春の存在が邪魔になつてきます。常人を越えた脚力や腕力がある小春は、自分が捨てられることを予感しはじめ、湧き始める嫉妬心…

 

…と、まあこのやうなストーリー展開です。あながち荒唐無稽かと思へば、しつかりリアリティがございます。嬉しかつたのは、実在する都心のレストランやカフェ、そして関西では戎橋や日本橋「国立文楽劇場」も登場し、詳細な街案内をしてくれます。

 そして、ラブドールと言へば「オリエント工業」。一般に馴染みの少ない世界といふより業界ですが、この特別な趣味の境地も、普通に世界中で認知され、商取引されてゐるといふ意外な事実を知らされました。

 さあ、ここまで来れば、かつて本ブログにてお知らせした、私の周辺で起きた「悲劇」を思ひ出される方も居られるのではないでせうか。もう8年も前のことになりますが、初めての方、是非ご一読下さいますれば幸甚です。​​​​​​​