「はじめまして、樹里の母の 折原陽菜(はるな〉と申します。」


「樹里?ああ、マリアンのことか。」


「マリアンて名前まで変えてしまわれたんですか?」


「君たちが勝手につけた名前だろう?変えても構うまい。


 君たちと違って血縁者の私たちが何をしようと


 文句を言われす筋合いはない。」



「捨てたくせに!あの子がどんなに傷ついたか


分かってらっしゃるんですか?


どんな思いで日本に来たか、分かってらっしゃるんですか?


いくら、後継者を亡くされたからって、


平穏に暮らしていた子をさらうように連れ去るのは人として


いかがなものなんでしょう。」


「捨てたわけではない。存在を知らされなかっただけだ。」


「あの子の母親が貴方方に知らせずに生んだ理由は、


なぜだか分かっているはずです。


堕せとそういわれたとか?


その時から、あなたとあの子の縁は切れているのでは


ないのですか?」


こんなに強気なセリフがよくもまあ自分から出てくるものだと、


陽菜は感心していた。樹里を受け入れるにあたって、


決めていたことが二つあった。


決して寂しい思いをさせないこと。


特別扱いしないこと。


いま、樹里が寂しい思いをしていると思ったらいてもたってもいられない。


人から見れば、他人なのかもしれないけれど、


私たちは確かに家族だった。


あの日決めたの。


どんなことがあっても、もう、家族を離れ離れにさせないと。


普通と違う規格外な家族かもしれないけれど、


私たちはちゃんとピースとして存在し、


家族という一枚の絵を形作っているのだから。