「学園長なら休暇とってるよ?届けでは5日、
伸びるかもしれないようなこと言ってたけど?
何?一樹君行き先知らないの?」
事務長が怪訝そうな目で、俺を見るので、
「はあ、俺、基本親とあんま話ししないんで。」
気のない返事をした。
「そうだよね、年頃の男の子はそんなもんだよね」
事務長がそう言って笑った。
笑い事じゃない、我が家の家族は二人も行方不明になっているのだ。
全く、どこへ行っただよ二人共。
昨日同棲すると言っていたマスターには会ってきた。
樹里がずっと入り浸っていたと思っていた喫茶店には、
本当は時々しか行っていなかったことがわかった。
恋人いうのも真っ赤な嘘で、もちろん同棲も全くの作り話だった。
どうやら家出は以前から用意周到に準備されていた。
樹里の消息はぷっつりと途絶えてしまった。
俺は塾をサボって、
ホームに滑り込んできたローカル線の下り電車に飛び乗った。
とりあえず、母の実家を訪ねてみるために。