カラン☆


「お、いらっしゃい。樹里ちゃん!」


「マスターいつものくださいな。」


正面のカウンターに、腰を下ろした。


「OK、ロイヤルミルクティーにホイップクリームたっぷりね。」


「うん♥ありがとう。」


マスターはくすりと笑いながら、


「いえいえ、これでも一応彼氏ってことですから。」


と、答えた。


「うん。今まで無理言ってごめんね。ありがとう。」



家族にはマスターと付き合っていることになっている。


本当は、今日という日の準備のために自由になる時間が欲しかったから、


マスターに協力してもらったんだ。


マスターは、茶器をお湯で温めながら、


ミルクパンで紅茶を煮出し始めた。


ミルクとアールグレイの香りが混ざって届く。


鼻の奥がキュンとなる。


「残念、マスターの作るミルクティー飲むのも最後なんだ。」


「本当に行っちゃうの?樹里ちゃん。」


「だって、あそこはあたしの場所じゃないもん。


居場所が有るってわかったら、一樹と杏樹に返さなきゃ。」


「いつ行くの?」


「今日、迎えが来るはず。」


マスターは無言でミルクパンからティーカップに注いだ。


「ちゃんとさよなら言えたの」


「ううん。無理だよ泣いちゃうもん。」


あたしの目の前にカチャリとミルクティーを置いた。


「みんな悲しむよ?」


「そうかな?そうだろうな多分優しい人たちだから。


いつか戻るつもり、恩返しするために。」


ホイップクリームをぽとりとカップに落とした。


「もう、これ作るのも最後なんだね、『樹里スペシャル』」


こんあ薫り高いミルクティーを飲むのもこれが最後だろう。



カラン


人の気配がした。


「お嬢様お迎えにあがりました。」



「今までありがとう。」本当に、好きだったよマスター。」




「僕も、君みたいな可愛い子の恋人役ができて幸せだったよ。」




「さようなら。」


まだ飲みかけのカップを残して、あたしは迎えに来た男とともに店を出た。



ペタしてね


色変えができない~なんで。゚(゚´Д`゚)゚。