「オヤジ、母と喧嘩したのか?」


「うるさい」


「あのなあ、俺一応受験生!学校から昼飯作るのに呼び出すのやめて、



 しかもエンジェル使うのやめて。」


「お兄ちゃん!ぼくが電話するよって行ったの。ごめんなさい。」


「いやいや、杏樹は悪くないよ。お前そういえば幼稚園は?」


「あのね、パパがさみしいから行かないでって、さみしいと悲しいでしょ?



だからぼく行かなかったの。」


ああ、なんて可愛くて健気な天使なんだ。


「オヤジ!4歳の息子に甘えんなよ!」


「ふん。同じ息子なのにお前はパパに冷たすぎるぞ、なあエンジェル。」


「弁当!コンビニで買ってきたから!」


「ええっ!作ってくれないの?」


「俺はあなたの妻じゃありません!」


「ふん、変なとこばっかりママに似てきたよな。」


「うるさい!早く食え!」


何度も言うようだが、我が家は普通じゃない。


その元凶がこの父親。


オヤジは高校生の時に、教師だったママに恋して


子供を作った上、責任も取らずに海外に逃げた男だ。


おかげで小学校上がるまで父親の存在を知らずに育った。


ん?変だって?ああ、妹ね?あれは腹違い、


樹里の母親はアメリカ人向こうでもがっちり子種まいて


戻ってきた時には樹里の手を引いてたわけ。


母はそんなオヤジを受け入れ結婚したのだ。


信じられないどこがいいんだこれの。



そんなわけで、俺には父への愛着ってものがまるでないわけだ。