馬鹿だなぼくは、
千葉のいなくなったことばかり寂しがって、
どうにもならないことばかり、あれこれ悔やんで、
後ろ向きな考えばかりで情けない。
千葉はちゃんと未来を見ているんだ。
一緒にいることが幸せすぎて、
ちょっと前の気持ちを告げることさえできなかった自分を忘れてた。
僕らはまだ子供で、自分の思うようにはできないけど、
大人の都合に左右されるけど、
でも、未来という時間を大人よりいっぱい持ってるんだ。
そうだよな千葉、ぼくたちは自分の夢を形にするんだ。
千葉は、指揮者になる夢。
ぼくは、ピアノでCDを出すことだった。
僕らは音楽で繋がっている。
目指していけばきっとまた交じり合うはず。
そういうことだよね。
ぼくは、携帯電話を開いてボタンを押し始めた。
「もしもし-------------」
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「のせっち、生きてたの?」
「あ、横須賀!!」
「いや~、腹切って無事退院したよ~!」
「盲腸だってね~大変だったじゃん。
最後まで千葉に心配かけるなんて、いい身分だよね!」
「そう言うなって、俺だってなりたくてなったわけじゃないしさ。」
「お、能勢~無事生還したんだ。
なあ、手術する前さあ~、剃るってホント?」
「さあな、意識ないうちに手術終わってたし。」
「なんだよ~つまんね~の」
冬休み明けていつもの学校、
いつもの教室。
だけど千葉がいない。
千葉の席は空いたままになっていて、
遅刻ギリギリでいつものように走り込んできそうだ。
だけどそれはもうないんだな。
「能勢~!何ぼんやりしてんだ~始業式始まるぞ~!!」
「おお!!今行く!」
机のフックにカバンをかけた。
教室から出るとき、もう一度振り返ってカバンのかかった机を見た。
「千葉も今頃向こうの学校で始業式かもな。」
そんな独り言を呟いた。
僕のカバンのポケットには
秘密がある
書きかけの楽譜に、手紙、
メッセージ付きの絆創膏に、
プリクラ
そして
僕の恋心
FIN.