千葉が笑っている。
あのおじさんの店のロフトで、
コーヒーを飲みながら、
おじさんと話している
『千葉!』
『たかちゃん?』
良かった間に合ったんだ。
まだ引越ししてなかったんだ
『千葉!』
駆け寄ろうとするけど、足が前に出ない、
『千葉!』
おじさんと千葉は不思議そうな顔をしてこっちを向いている。
「たかみち?」
「たかちゃん?」
「千葉!!」
気がつくとベッドの上だった。
おじさんと千葉が心配そうに俺を覗き込んで?
「たかちゃん大丈夫?」
「お前うなされてたぞ」
「アレ?千葉?なんでここに居るの?」
「よかったぁ、目が覚めたんだね。手術もう終わったんだよ。」
俺は慌てて起き上がろうとした。
「え?あ、いてて…」
「お腹切ったんだから、しばらくは無理しちゃダメだよ。」
「そうだぞ、明日までは動いちゃダメだからな。」
「千葉に行ったんじゃないの?」
「ふふ、明日の朝パパが迎えに来ることになったの。
だってこのままじゃ心配で、
もぉ!たかちゃん最後まで心配かけるんだから。」
「ご、ごめん。」
「でも、良かった、最後にちゃんと会えて。」
「今日はね、たかちゃんちに泊めてもらうから。」
「え?」
「うちはもう入れないし、引っ越しちゃって何もないもの。
たかちゃんのママがどうぞって、
甘えちゃうことにしたの。」
「ちぇ、俺動けないのに」
「たかちゃんの部屋に泊めてもらうから♡」
「え、やたら見るなよ色々。」
「あら、見られちゃ困るものでもあるの?」
「病人をからかうなよ。千葉って割といじめっ子?」
「ふふ、ごめ~ん。」
そうこうしているうちに、母さんや、ドクターや看護師さんが集まってきて
色々聞かれ、病状や注意事項が告げられた。
俺は、気を失っているうちに腹を切られ、内蔵の一部を取り去られていた。
「気分はどうですか?」
「ああ、ちょっとお腹すきました。」
「口からの食事は、おならが出てからね?」
「出たら、看護師さんに言って、そうすると食事が準備されるから。」
おなら??
おれが千葉を振り返ると、
千葉には聞こえなかったみたいで、窓の方を見ていた。
良かった聞かれてなくて、頼むよドクター、
お年頃なんだからさ。