冷や汗が出てきた。
緊張しているせいだろうか、
舞台の袖で、前の演奏者が演奏している最中。
お僕は何度も手を握ったり開いたりを繰り返していた。
大丈夫。もう少しの我慢だ。
痛み止めを飲んでるせいか、
いつもと手の感覚が違う気がする。
目もかすむ気がする。
見えなくたって大丈夫、楽譜は俺の頭の中にある。
前の演奏者がむこうの袖に退出した。
ぼくは、ピアノの横まで歩いて行き、
「演奏番号23番 持田中2年 能勢天道です。」
礼をしてから、椅子に座る、
鍵盤の位置を確認し指を置く、
すうっと息を吸い込んだ。
頭の中のイメージと指先がつながった。
意識は全てイメージの中に吸い込まれていく------