「それで?どこに居たんだ?」
母さんがいなくなり二人残された部屋で、
珍しくお茶を入れながら、父さんが聞いてきた。
「ああ、卓おじさんとこ。」
おじさんは母の弟で、40過ぎているがまだ独身なのだ。
「そうか、今までか?」
「うん、ピアノ弾かせてもらって、コーヒー貰って、千葉送って帰ってきた。」
「?千葉?友達か?」
「ふふふ~彼女♥」
「へえ~可愛い子か?」
「当然!」
「中2で彼女とか生意気だな~。
家に連絡一本入れれば問題なかったのにな?」
「そうだね。」
父さんと話すのってすごい久しぶりだ。
営業の父が、こんな時間に帰ることってまず無い。
家出とか、本気で焦って電話しまくって、
あわあわしてる母さんが目に浮かんだ。
「俺、謝るべきかな?」
「さてな、お前のしたいようでいいんじゃないか?
おやじの目から見れば、お前が反抗期で、
母さんは、子離れしきれない過保護としか見えんしな、
どっちもどっちだろ。」
「ずるいなあ。」
「そうかあ?」
「そうよ、ずるいわよお!お父さんは!」
いつの間にか戻ってきた母さんは、まだ膨れてたけど、
手には新品の携帯を持っていた。
「これは、みっくんに、母さんとお父さんからプレゼント。」
「え?」
「よく考えて使いなさいよ。あまり度が過ぎたら取り上げるからね?」
「マジで?」
「1番に登録されてる番号は、母さんからのお詫び♡」
アドレスを開いてギョッとした。
『安土千葉』
「なんで?」
母さんはふふっと笑って、
「さて?なんででしょう?電話してみたら?」
「母さん!ありがとう!!」
ぼくは、貰ったばかりの携帯を握り締め、自分の部屋に駆け上がった。
「お父さんにも言ってやって!」
後ろから追いかけてきた声に、振り返って、
「父さん!ありがとう!」
と聞こえるように叫んだ。
我ながら現金だ。
アドレスのボタンをおして電話する。
ホントに千葉の番号なのか?
ドキドキしながら応答を待つ。