バウンッ
いかにもハズレって音がしてシュートが決まらない。
「能勢~調子悪いなあ。」
「うん。ちょっと…」
「指まだ治ってないとか?」
「いやそんなことはないけど…」
「なんだよ歯切れ悪いなあ?佐伯Tに見つかったらまた何か言われるぞ?
ちょっと気合入れろよ。」
「うん、分かってんだけどさ~」
「お、噂をすればお出ましじゃん。何か呼んでねぇ?能勢の事。」
佐伯Tが片手を上げて、
こっちを向いて何か言っている。
あれは、相当機嫌が悪い。何だか嫌な予感がする。
走り寄った俺にイキナリ怒声を浴びせられた、
「お前、半端な気持ちで練習参加してるくらいなら部活なんてやめちまえ
お前の本気はその程度か!」
急に、気まずそうな顔になり、
ごほんっ咳払いした。
「いや、そうじゃなくて、
お前来週コンクールあるってなんで言わない?
やる気を見せろとはいったが、
お前は自分の未来をバスケに架けるわけじゃないんだろう?
やる気は、違うところで見せてもらう。帰って、その指休ませろ。」
「先生!俺バスケも好きなんです。ピアノは夢だけど、
バスケはすきなんです!」
「お前がバスケ好きなのは知ってる。やめろは言いすぎた。
ほかの先生たちからちょっと言われて、苛立った。
悪い。
とにかく、俺が許すからコンクールまで部活休んでくれ、
大切なコンクールなんだろう?」
「でも…!」
「とにかく休め、話はコンクール終わってからだ。
帰っていい!」
取り付くもまもなく右手を振り俺の言葉を遮り無言で追い払い、
みんなに招集をかけた。
その場に残された俺は、黙ってぺこりとお辞儀をして、
「失礼します!」
ありったけの声で言って、体育館を後にした。
佐伯Tにお前はいらないと言われたようで、泣きたくなった。
中途半端な俺、
いっそやめられたらいいのに、
鞄をとりに教室に戻る…
ガラっ
俺の机に座ってうつ伏せている人の影があり、驚いた。
ハッとして顔を上げたのは、
泣きはらした顔の千葉だった。
「千葉?泣いてるのか…」
「たかちゃん…」