「今度の土曜日?」
「そう、先生来週から演奏旅行に行ってしまうらしいの..。
今度の土曜の1時から3時までって時間無理言って見ていただけることになったから
東京行くわよ。」
「なんで東京なんだよ。先生の家に行けばいいじゃんいつもみたいに。」
「だから旅行中に時間をもらって、お知り合いのお宅を使わせてもらうのよ。」
「いいよ。そんなことしなくったって、自分でやるし。」
「わかってるくせに、一度見てもらうだけで演奏がどれだけ良くなるか。
コンクール前に見てもらいたいと思ってたのはあなたでしょ?」
そうなんだ、やはり、第三者に間に入って聞いてもらい問題点を指摘してもらうことは、
独りよがりな演奏にならないで済む。演奏家の先生の指導は的確で、
それだけで行って帰ってくるほど違ってしまう。
「違う日じゃダメなのかよ。なんで…」
「何が大切か、もうわかる年よね?」
「…もうっいいよ。」
そうさ、別に遊園地なんて行かなくったって何も構わない。
今の俺に必要なのは、
東京に行ってレッスンを受けること。
でも、
でも、
みんなで勝ち取った賞。
そしてみんなで千葉と思い出を作る約束。
そこにいられないなんて、いられないのかよ?
あと少ししか一緒にいられないのに、
なのに、何より、誰より大切だって思ってんのに
そこにいられないなんて
でも結局ぼくは君を選ばない。
神様は意地悪だ。