秘密だよ? 20


僕のカバンのポケットには秘密がある

大切な僕の恋心

「なんで付いてるの?」


「今日はとにかく家にいなさいよね。すぐ無茶するから。


熱だってあるんだし、何よりその指痛いでしょ?」


「平気だって!医者だってたいしたことないって言ってたじゃん。」


「一日は安静にしろとも言ってたよね?


 わかってる、玉山学園のコンクールもうすぐでしょ?」


「わかってるよ、曲だって仕上がってるし、大丈夫だよ。」


「なら、今日は弾かないでよ、ゲームもダメだから、PCもマウスだけだから。」


母さんは、最近ピリピリしている。玉山学園のコンクールは優勝すれば、


音楽の奨学生になれる。留学とかCDの道も開ける。


普通のサラリーマンの我が家では、この先ぼくがピアノを続けて行くには


経済的な限界がある。その為母はこのコンク-ルにかけている。


母さんは俺をリチャードクレーダーマンにしたいらしい。


話によると、それはお腹にいるときからの願いで、


ぼくはそのかあさんの敬愛するリチャードさまの演奏を聴かされ育った。


だから、どうしてもピアノを続けさせたいらしい。


週一回有名な演奏家の家に習いに行く。電車に乗りたかが30分のレッスン、


そして大量の課題をもらい一週間で弾きこなす。


今まで僕の指にかけたお金は外車一台軽く買えるだろうと父が言っていた。


父は、そんな母の夢を応援してやりたいから頑張れとぼくに言う。


夢は人にかけるもんじゃないとぼくは思う。


でも、最近思うんだ。リチャードクレーダーマンになれるかはわからないけど、


いつかぼくの演奏をCDにして千葉に聞かせたい。


千葉はきっと、あの可愛い目をキラキラさせて口元を緩ませて


ぼくの演奏した曲を聴いてくれるかなって。


それが今のぼくの原動力だ。



To be next!


12まで全体に公開しました。