俺は野球のプロであり、また「盗み」のプロでもある。「盗み」ってのは犯罪行為たる窃盗のことを指しているワケではない。俺は野球選手であり、「盗み」も当然ながら試合中にグラウンド上で行う「盗み」をもってして、「盗み」のプロであると豪語しているのだ。

 試合中に俺が盗むモノは塁である。塁を盗む、世間一般では盗塁として知られる行為のことだ。ただ、塁を盗むだけで自分が「盗み」のプロであるとのたまう程俺はビッグマウスではない。

 ピッチャーのクセ、さらにはバッテリーの目を盗むのだ。これらを難なく盗むコトが出来るからこそ、俺は自分を「盗み」のプロと呼ぶのだ。

 俺の「盗み」の技術はプロ野球選手の中でも抜きん出ていると自負している。いくつか賞を盗んでいるから客観的に見てもそうなんだろう。賞は貰うモノではない。盗むモノである。何故なら、俺は「盗み」のプロだからだ。

 なんてことだろう。俺から「盗み」を行う輩が出て来やがった。医者の不養生よろしく、「盗み」のプロが「盗み」にあっちまった。ソイツは若さと勢いにモノをいわせて、俺から出番という大切なモノを盗んでいきやがった。

 俺の出番は無くなった。給料泥棒と罵られる様になった。泥棒か。俺は「盗み」のプロだ。