水池氏は表では妻と子供を持つ一般的な人だったが、裏では悪徳な商売をする高利貸だった。そんな彼のもとに次のような脅迫文が届いた。
お前に人生を狂わされてた恨み晴らしてやる。
お前の大切な妻と子供を殺すことで。
はじめは子供だ。体中に穴が空き、血だらけの醜い姿で発見されるだろう。
そのあとにあんたの妻だ。全身を焼かれ、誰ともわからない姿で発見されるだろう。

水池氏は警察に相談するか迷ったが、高利貸の方の商売の悪事が暴かれかねないので相談しなかった。そして事件は起こった。

昨夜の内に水池氏の子供と妻が行方不明になり、今朝8時ごろ公園で水池氏の子供の死体が発見され、さらにその日の午後1時頃廃工場で水池氏の妻の死体も発見されたのだ。
ふたりとも脅迫文通りの殺害方法により殺されていた。
動機のあるものは大勢いて犯人探しは困難を極めたが、警察はあるひとりに疑いの目をかけた。
北実氏だ。彼は最近水池氏から借金が原因で妻と子に逃げられた経歴がある。彼なら犯人になり得るとふんだのだ。
しかし彼を犯人にするには問題があった。彼にはアリバイがあったのだ。

捜査にあたる刑事によると「水池氏の子供の死亡推定時間は午前6時から午前7時で、妻は子供の死亡推定時間の午前6時から発見される午後1時と推定される。北実氏は午前7時ごろから午後5時ごろまで自分の勤めている会社に出勤している。
子供の死体が発見された公園から北実氏の警備会社の距離は30分であるから子供の殺害は可能である。
しかし、廃工場と北実氏の勤める会社までは1時間半かかり、妻殺害は不可能になる。共犯の可能性は捨てきれないが、手の込んだ殺害方法からみても犯人なりのこだわりがあり、それを他人にやってもらう可能性は低いだろう。」
それを聞いていた上司の神山警部はこう言った。
「犯人の策略にはまりすぎだよ。少し見方を変えれば北実氏にも犯行が可能なんだ。」