元々、営業マンとして10年以上法人相手に、仕事をしていた耕一は、彼なりのやり方もあった。しかし、今は、売る物がないのである。材料や製品を売るわけではない。では、いたい「何を売るのか?いや、売る物など何もない。じゃ、何を目的に、面談をするのか?」
このスタート時点での何かを見極めるために、かつての恩師である菊田氏に連絡してみた。
この菊田氏は、以前大手の人材教育会社のトップインストラクターをしていた。耕一が27歳の時、当時在籍していた会社の命で「営業マンパワーアップセミナー」へ参加した。対象は、営業5年以上のいわゆるベテランの手前の人材である。この頃の耕一の記憶を少し、辿ろう・・・
これに参加した際に、耕一は一生忘れる事が出来ないほどの強烈な記憶があった。それは、参加初日の夜「おい、中澤、立て!」と菊田から怒鳴られた。耕一は、黙って立った。菊田は「貴様、何しにここへ来た?真剣に受講できないなら、今すぐ帰れ!」と・・・・耕一は、一瞬「まあ、しょうがない・・・」とだんまりを決め込んでいた。会社の命で来ている以上、途中退散はみっともない。そこで、その場は渋々「すみません。」と謝罪した。しかし耕一は「そこまで、言うならこのセミナーがいかほどのものか、試してやろう!」と全身の集中力を上げてその後、3日間を過ごした。
セミナーから戻った耕一は密かに、講習で教えられたプロセスを一つ一つ検証してみた。つまり、実践したわけである。1ヶ月ほど経った頃から、これまで訪問していた担当者からの電話が増えた。(当時は、携帯電話もなく、ましてやパソコンもない時代である。あったのはポケベルくらいだったが・・・)明らかに何かが変わり始めたことに気づいた。それは、電話の内容が相談事が多くなってきた事と相手の口調が明らかに好意的に感じた事である。
耕一は、不思議に思った。「なぜだろう????」すると、3ヶ月~半年と過ぎていった。その時振り返ってふと気づいた。それは、営業として売込成功率が明らかに上がっていた事であった。これは、扱っていた商品が生産向けの製品のために、採用までにそれ相応の時間がかかると同時に、案件を拾い上げるのも容易ではない。よって、面談での対話が大変重要である。先のセミナーでは「気づき」を最大のテーマにした対話における能力をシステマチックに学んだのではなかろうか?
人の心理は、言い換えれば「気分」そのものである。いかにして、こちら側の意向を伝え、理解してもらい、納得してもらうか?と同時に、いかに相手に本音を話させるか?ではなかろうか?これは、物を売るという行為に留まらず、「対話」としてその目的を果たすための基本的なプロセスではなかろうか?
そして、耕一は売込成功率(例:10件の新規採用売込みに対しての成約率)が6割、7割を上がっていくのを自身で体感したのであった。(続)