耕一と下田は、鎌倉について指定された住所を頼りにそこを訪れた。鎌倉の繁華街?から離れた、一軒家の立並ぶ一角に入り、玄関に立ち止まった。
築数十年はたっているかのような古めかしい大きな家であったが、入り口から玄関先まで、30メートルほどあった。
「すみません」っと耕一が声をかけると、奥から30代前半と思える女性が「こちらへ」と部屋に通された。そこは、8畳ほどの部屋で、座机が3つほどあり、それぞれにパソコンが置かれていた。まるで、合宿所の勉強部屋のような雰囲気である。
「いったい、何が始まるのか?」と耕一と下田は顔を見合わせた。案内した女性が「暫くお待ちください・・・」と言い残し、10分ほど経って「こちらへどうぞ」と別の部屋に通された。そこは、20畳もあろうかという大部屋で、大きな座卓があり、7名ほど男女が取り囲んでいた。「なんかや辛気臭い雰囲気だな?」と耕一は心の中で呟き、緊張した面持ちでその場に座った。
「やあ、ようこそいらしてくれました。はじめまして。私がここの家主の加藤です。」その初老の男は貫禄ありげに口を開いた。「ここは、私が長年多くの人々、特に若い企業家を目指す人たちと共同生活をしている場所です。」「いわば、企業家を目指す草庵っとでも言うべきか・・・」「ここでは、ご覧いただいたメールマガジンの発行や、新しいビジネスの種の情報を収集する場所であり、はたまた大物企業家といわれる方々も此処へいらっしゃるところです。」
下田と耕一は、ポカンとその言葉を聞いた。まるで、映画かドラマの演出のようだった。続けて加藤は、「私は以前、共同通信で働いていて世界中を飛び回っていた。そのうちに、自信が本当にやるべきは何か?考えて、インキュベーションにたどり着いた。日本では、未だ一般的ではないが、ビジネスの種と人材を発掘し、マッチングさせることにより、その成果を眺め、報酬をいただくと言うことなんだが・・・」ただ黙って聞いていたが、2人は初めて味わう経験で、返す言葉が無かった。
「あの、私たち2人が来るべきだったのでしょうか?」耕一はたどたどしく質問した。
加藤は「あはははは、そうだよな。実感として分からないよな?いや、君のメールの返信と、送られてきた職務経歴書を見る限り、かなりユニークな人物と感じたんだよ。ここにいる書生たちの誰も持っていない熱気が伝わったんだよ。」といいながら、お茶を口にしたが、「こりゃいかん、ビールくれ!」と脇の女性に言った。
「飲むかね?」と勧められたが、耕一は断った。
「さて、中澤さん本題だが、本日の話はあるところから、君のような人材を探しているスポンサー、要は資金がある人間があるところを通じて、依頼されたのです。言い換えれば、人材斡旋かな?但し、通常の職業斡旋ではない。あくまでも、起業できる人材としての要求なんだ。」と加藤からの言葉だった。