高柳:「中澤さん、先ほど話をした3者は繋がっている様なんですよ。順を追ってお話しますが、エイペックスジャパンより先にはめられたのが李社長の会社ですよ。」
耕一」「・・・・・」
高柳:「まず最初に、中澤さんに野村氏を紹介したのを誤ります。ただ、彼がその手のつながりだったとは全く知らなかったのでご理解ください。野村氏の役目は、見込みのありそうな新興企業を探し出す目利きの一人にしか過ぎなかったという事です。そして、気に掛けた企業の社長を村上氏に紹介していたのです。」
耕一:「では、あの赤坂の夜は、その前兆でもあったわけですか・・・」
高柳:「そうです。あの席では、私も全く知りませんでした。」「そして、次に村上氏ですが、彼はファンドとエンジェルの2つの顔を持ち、個人投資家からの資金を一括して預かり管理しつつ、自身も投資家であります。ここまでなら、通常の事で問題ないのですが・・・問題はこのファンドです。ここに資金を提供する人間は、一般人ではないということです。それは、このファンドがこれまで一度も目減り(損失)したことなく、かなりの高い確率で党利利益を還元してきている事でです。通常の機関投資家でも、その打率は3割出せたら、上出来です。しかし、5割以上、かつ損失ゼロはありえない。つまり、仕掛けか仕込みがそこには存在します。」
耕一:「なんとなく分かりますが・・・自分には無縁のような・・・」
高柳:「可能性のありそうな会社に目をつけておいて、あとは仕掛け若しくは仕込みにはめるんです。その仕掛けや仕込とは、目をつけた会社の状態やステージ(IPOまでのスケジュール)に応じて、様々な手段を講じるわけです。」
高柳:「まず、未公開会社でIPOを目指す会社を調べ、内容をよく吟味します。その上で、公開が間近な場合は、一株あたりの金額で投資するかどうかの判断によりますが、更に筆頭株主の個人情報を集め、差し当たって資金需要があると分かると、すかさず相対での譲渡のアプローチを掛けてきます。そして、通常の株価より安価に入手します。ここまでも、まだ許せる範囲です。」
耕一:「それで・・・」
高柳:「ただし、この場合はまとまった金額でないと、上場益の利幅が見込めないので、あまりこの手法は使わないのです。次に最も彼らの得意とする連携的プレーは、目を付けた会社の財務状況で判断します。この際には、その会社の持つ経営資源が価値があることが前提ですが、新興企業はとにかく財務体質が悪いのが特徴です。信用も無いゆえ、間接金融(銀行)からの融資は簡単には望めません。よって、この場合に株式の第三者割当増資をしますがこれに仕掛けるようなんです。」
耕一:「それは、当社の事も当てはまるではないですか・・・」
高柳:「そうなんです。ここで、村上氏の出番なんですよ。彼の持つ人為的ネットワークがしたたかに効いてくる。それは、例えばJAFCO(VC)が投資するなら、横並びで他のVCも投資したくなるのですが、そのJAFCOを動かせたらどうなると思います?つまり、直接金融であるVCとその他機関投資家を動かせたら・・・ただ、投資判断の意見を言うだけでは問題ないのですが、もしかりに決定された意思を変えられる力があれば、話は変わります。但し、一方的、独断的では、大人気ないのは当たり前です。ならば、なぜそのような事が可能なのか?それは、村上氏個人のグレー名部分もあるようですが、要は表も裏も知り尽くしているような部分がる用です。」
耕一は、ここまでで「ちょっと、人いきれさせてください」とビールを頼んだ。煙草に火をつけ、深く吸い込みながら「高柳さん、やはり私なんかが入り込む世界ではなかったのでしょうかね?・・・・」
高柳は「いや、そうじゃないですよ。私から見て中澤さんみたいな方が社長として、起業して商売して欲しいと思います。事実、今年の夏の第一回目の調達に協力したのも自分が納得できる相手でないとなかなか難しいんですよ。」といって、ビールを一気に飲み干した。