社長退任・・・その4 | 起業から、経営者へ、そして・・・

起業から、経営者へ、そして・・・

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耕一は、オフィスを出るとあてもなく歩き回るようになった。

「どうすれば・・・」と、耳鳴りのように頭の中をぐるぐるまわり何も考えられなかった。



ある時、銀座の真ん中で何気なく入ったビルのエレベータが最上階で止まった。降りるとその先に屋上へ続くと思われる階段があった。そこを上ると、難なくビルの屋上に出た。恐らくは、9階建て以上だろうか?

吹く風は、冷たく無機質だった。見渡した視野には、鮮やかなネオンと雑踏の音が交差して感じられた。

耕一は、下を覗いた。一瞬、背筋が震えた。「どうしよう?」立ちすくんだ。色んな記憶が、頭の中を駆け巡る・・・・親兄弟、家族、社員、知人、・・・果たしてこれから・・・何が一番大事なのか・・・

その時、ポケットの携帯電話が震えた。耕一は、躊躇いながら液晶の表示を見た。知らない番号である。



そのまま、放置した。すると、数分後またその番号が表示された。耕一は「はて?・・・」電話に出てみた。すると、落ち着いた声で「あの、先日メールでご連絡していたんですが・・・」

耕一:「どちら様ですか?」

  :「メールでお話させてもらっている、智子です。」

耕一:「あっ!どうも、失礼しました。知らない番号だったので・・・ビックリしました。」

智子:「今夜、お時間が合えばと言う事で、ご連絡お待ちしていたんですが・・・お忙しいですか?」

耕一:「あっ、いやその・・・忘れてまして・・・すみません。いま、どちらですか?」

智子:「有楽町の駅の近くです。お忙しければ、ご無理は申しませんので・・・」

耕一:「そ、そんなことなくて、急だったんで・・・私も今銀座周辺です。これから会いましょう。そちらにいきます。どこにいけばいいですか?」

智子:「そうですか?じゃ、交通会館の地下のマイアミで待っています。目印はななにかありますか?」

耕一:「そうですね・・・じゃ、黒いコートを着てますが、右手に紫色の社封筒を持っています。」

智子:「分かりました。お待ちしています。」



耕一は、我に還りそのビルを降りた・・・



数十分後・・・

耕一は、智子といい女性と待ち合わせをした。智子とは、インターネット上でのエキサイトの出会い系のサイトでメールのやり取りをしていた。これは、まだ当時走りだった、出会い系サイトに関して、匿名で様子を見ていた。エイペックスジャパンが提唱するセールスプロモーションと何か関係はないのか?と言う事であった。たまたま、電子メールの交換で、なんとなく話をしていた。まさか、本人と直接会うなどとは、思ってもみなかった。(今では、それが当たり前のように言われるが、当時は今のようにセックス目的が主体の様子も薄く、単純に他人との出会いのキッカケに過ぎないと、耕一は思い込んでいた。ましてや、他人と何の用事もないのに会うはずもなく・・・・と考えていた。



耕一:「はじめまして・・・」

智子:「こちらこそ、よろしかったんですか?」

耕一:「あ、はい。すいません。待ちましたか?」

智子:「そうですね、30分くらいかな?」

耕一:「じゃ、お食事でもいかがですか?何か召し上がりたいものはありますか?」

智子:「そうですね・・・じゃ、お鮨が食べたいんですが・・・」

耕一:「わかりました。いきましょう。ここからだと築地が近いので、移動しましょう。」とタクシーを止めた。



智子は、落ち着いた声の割には小柄であった。どこか清楚な雰囲気もありつつも、なんとなく影を感じる気もした。年齢は・・・恐らく30代かどうか?耕一は、久しぶりに一瞬仕事を忘れていた。