■芦野宏「若い世代に伝えたい」
初夏恒例のシャンソンの祭典、第49回「パリ祭」が7月2、3の両日、東京・渋谷のNHKホールで開かれ、その後各地を巡業する。本場フランスに学んだ石井好子が1963年に同祭を創設し、育ててきたが、昨年逝去。後を託された盟友の芦野宏は「歌手と観客が垣根なく歌に集える場所を、という石井さんの初心に立ち返りたい」と語る。
芦野は24年、東京生まれ。53年にデビュー。淡谷のり子や越路吹雪らと日本のシャンソン界の草創期を担い、55年から10年連続でNHK紅白歌合戦に出場するなど国民的歌手として活躍した。
ここ2年の間で石井をはじめ、高英男、深緑夏代らシャンソン界の重鎮に相次いで先立たれ、大きな喪失感を抱いた。病床の石井からの最後のはがきには「あなたの友情を信じます」と書かれていた。日本シャンソン協会会長の後任に、との意味だった。
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「シャンソンは年代も国境も超え、すべての人と生きていく音楽。ジャンヌ・ダルクだった石井さんを思い、どうやったら次世代に継げるか真剣に考えた」。
思い起こしたのが、シャンソンの本質が「平等」ということだった。「クラシックのように発声を学ばなくても、自分の声で歌うことができる。垣根なく人間の数だけ歌がある。それがシャンソン」
新たな才能を見いだすべく、「Jポップ」ならぬ「Jシャンソン」に取り組んだ。新たにコンクールをつくり、作詞家のなかにし礼さんに書いてもらった詩に作曲してもらったり、「愛の讃歌(さんか)」に自分の言葉で自由に歌詞をつけてもらったり。自分たちの文化として若い人にシャンソンに能動的に関わってもらいたい、と思ったからだ。
「歌というと身構えるけど、シャンソンは日常と一続きのところにある。豪勢なホールじゃなく、街角だって、場末の飲み屋だって、どこでもシャンソンは人をつなぐことができるんです」
4月には石井らの業績を顕彰する音楽祭「フェスティバル・ドゥ・シャンソン2011」を開いた。一方で、95年に群馬県渋川市に開館した、歌手の衣装や遺品、楽譜などを所蔵する「日本シャンソン館」では、週末のライブに自ら出演し続ける。
そして、いよいよ「パリ祭」に。
「垣根なく人々が歌い交わすこの場所で、シャンソンの足元を改めて見つめ直し、未来への礎としたい」
東京公演は両日午後6時、1万~4千円。出演は永六輔、三田佳子、山本リンダ、ROLLY、加藤登紀子ほか。9日・静岡▽16日・神戸▽17日・岡山▽18日・広島▽20日・名古屋で開催。ジェイステージナビ(03・5957・5500)。(吉田純子)