今月1日、歴史が大きく動く事件が起きました。ミャンマーで軍事クーデターが発生したのです。ミャンマー国軍は昨日未明、選挙での不正を理由にクーデターを起こし、政権を掌握したと発表しました。与党・国民民主連盟（ＮＬＤ）を率いるアウンサンスーチー氏や、ウィン・ミン大統領らが拘束されたことも明らかとなりました。

ところで、その軍事クーデターの数日前に、中国の王毅外相がミャンマー軍トップのミン・アウン・フライン司令官と会談していたことはご存知でしょうか。

中国国営メディア・新華社通信（1月12日付け）の報道によると、1月12日、ミャンマーを訪問した王毅外相はミャンマー軍総司令官のミン・アウン・フライン氏と、両国の関係強化などについて会談しました。

この会談で王毅外相は、「ミャンマー軍がミャンマー国内の民族振興に大きな役割を果たしてきたこと」や「中国・ミャンマー両国は運命共同体であり、将来の発展のため、これまでの友好関係を堅持していくこと」などを確認し、さらなる関係強化を提言。

さらに、ミャンマー軍について「ミャンマー軍がミャンマー国家の発展のため積極的にその役割を果たし、貢献していくことを支持する」とも発言したようです。

一方、ミン・アウン・フライン軍総司令官は王毅外相に対し「中国との関係強化を進めるとともに、台湾問題・香港問題・ウイグル問題において、引き続き中国の立場を支持していく」と、政治的にも経済的にも中国との結び付きを強めたい意向を示しました。

コロナ禍の中、積極的に各国を歴訪している中国の王毅外相ですが、ミャンマーで軍部トップとの会談を行なったのも、何らかの形で軍部によるクーデターを察知していたからかもしれません。

ミャンマーでの軍事クーデターは、中国にとっては朗報と言えるでしょう。ミャンマーでは2011年から民政移管が開始され、徐々に民主化が進んできました。その一方で、中国資本の流入によって職を奪われた市民もおり、中国に対する反中感情は年々悪化、反中デモも度々行われてきました。

中国は、ミャンマーが軍事政権となることでミャンマーに対し政治的、経済的に強い影響力を与えることができるようになります。中国が推し進めている一帯一路構想でも重要な拠点となるミャンマーに、影響力を及ぼすことが可能となるのです。

また、今回のクーデターにより当分の間、西側諸国の注目をミャンマーに引きつけることができます。現在、WHOによるコロナウイルスの調査が行われている中国。台湾への強行姿勢も相まって、世界各国から冷たい視線を集めています。今回ミャンマーで突然発生した軍事クーデターの影には、様々な国の思惑が交錯していたのかもしれません。

ミャンマーの軍事クーデター、発生直前に中国外相が軍部と会談