昨日に引き続き佐藤信淵を。今日は「混同秘策」の内の「混同大論」を。


この有名な本を読むのは始めてで、

ブログ前回の経済要略を読み、彼の経歴を見ていましたら、大東亜共栄圏の事が書かれてあり、また彼の思想が大いに関係しているとありましたので、気になり読んでみたというわけです。


どう関係しているのか。


まず解題・解説を読みましたら、この文の末尾にある

予深く上天煦育(くいく=あたためそだてる)の大恩に感じ、ひそかに六合を括嚢するの意あり。然れども奈何せん、家貧にして年の老いたることを。於是乎此書を筆記し、題して混同秘策と名付け、いささか以って晩遠の鬱憤を写し、固封して児孫に遺す。ああ、後来の英主、宇内を鞭撻するの志ある者は、先ずこの編を熟読せば思い半ばに過ぎん者なり。」に注目し、

信淵の本心と理想とをこれだけ赤裸々に表白した書物は他に見いだせない」根拠をここに求めています。

自分の思いを全てこの本にぶつけた、でもその実現が不可能だから、堅く封をして子孫に残す。

おおぴらに人に見せないと思って、好き勝手・本心を書いたと言うのです。



それじゃ、その本心はと、内容を読めば


まず、日本が世界で最初に出来た国である。

だから、他国は日本の郡県になるべきで、さらに他国の首長が臣僕となるべきだ。

それが世界万国の人民・蒼生を救済すると。

そのため、国力を強くし、満州・中国・蒙古・朝鮮・台湾・フィリピンを攻略する。


北の人は食料が不足しているから、食料を差し出し懐柔する

つまり、まず厚く酒食を施して彼らを喜ばせ、我が国特有の神教を説き聞かせ教化、帰服させるのがいいのです。

また、

中国人は勇気が無く、事物に懼れ易いとか

我が軍の火攻法は向かうところ敵なしとか

韃靼諸部の夷狄等も皇国の恩徳に心服さば、これもまた大衆を会して支那を攻めるとか

南方に進出し、開拓してわが属地とし、産物を本国に持ち帰って、国家の入用に供するのが良策、とか


信に能くこの策を用いば十数年の間にシナ全国悉く平定すべし。


産霊の法教を明らかにし、万民の疾苦を除き、所々に神社を造営して皇祖の諸大神を祭り、学校を興立し、・・・

全世界皆皇国の郡県となり、万国の君長もまた悉く臣僕に隷せんこと論を俟たずして明らかななり


とあり、これらの事を私が実行したいのだが

いかんせん家が貧しく年老いたので」駄目だという事、

仕方が無いから、この書を書いてうっぷんをはらす。

そして、「書を隠し持って子孫に残す。



まさに言いたい放題、奇奇怪怪、奇想天外、抱腹絶倒、

子供相手の大言壮語。

家貧しくて、年老いたから出来ないとはどういう事なのか?


彼の思想が大東亜共栄圏と関係しているとは到底思えません。

なぜなら、根拠の無い、大風呂敷の、都合のいい思い、相手の事を考えていない、子供程度の幼稚な論理、まともに読めない内容だからです。

しかし書かれてある事は、先の戦争とよく似ています。

かなり似ています。


帝国陸軍は、この本を読んで真に受けて実行したのでしょうか。

それはないと思いますが。

だから、関係ないと思うのです。



前回の「経済要略」を書いた人のとは別人の書物であると、感じるくらいにギャップがありました。

ひょっとすると、父、祖父の説と信淵の説が微妙に違っているのかも知れません。なぜなら、彼は家学とし、資料全てを引き継いだのだから。