昨日から新しい本を読んでいまして、それは

「光の場、電子の海・量子場理論の道」吉田信夫著  新潮社  2008年

です。


この本は量子場理論を一般読者のために解説して見せる、画期的な1冊だそうで、著者も

量子場の理論は難解である。だが、その内容をある程度まで理解したとき、人は驚きと喜びを禁じえないだろう。世の中には、不確定性原理やシュレディンガーの猫といった話題を取り上げて、量子力学の不思議さを吹聴する書物が少なくないが、量子場の理論を学ぶと、そうした軽薄な騒ぎに巻き込まれることが恥かしくなるだろう。この理論は、それほどにも深遠である。

と、高々に宣言されます。


私には著者のこの言葉を読んで、丁度法華経に書かれてある、“小乗は誤りで、大乗仏教こそ深遠な教えである”と、何度も何度も述べられてあったのを思い出しました。


量子力学と量子場理論は違うというのも、難解だというのも知っていましたが、この著者の言葉は、私にとってかなり刺激的な言葉ですから、

是非、勉強してみたいと思ったのです。


で、

昨日から読んでいます。冒頭は他の解説書と同じで、20世紀前後のヨーロッパの物理学会の雰囲気の紹介、量子力学の誕生が述べられていますが、

この著者は、その時に現われた多くの論文(プランク、アインシュタイン、ボーア、ド・ブロイなどの論文)の内容を直接読んだかの如くの雰囲気を述べられており、さらに興味が湧きました。


まだ半分ほどしか読んでいないので、全体を見渡せませんが、

もし科学の世界に幸運の女神がいるとすれば、彼女は、間違いなくプランクに微笑みかけていたはずだ。プランク分布の式を見いだしたのも、この式を量子仮説と結びつけたのも、論理的な思索の所産と言うよりは、思い付きがうまくいった結果だという感が強い。量子仮説な内容がいささか突飛だったこともあって受容が遅れたが、最終的には「量子論の父」と呼ばれ、1918年にノーベル物理賞を受賞したのだから

とか

アインシュタインは、・・・彼は自分の直観を信じて、電磁波が、自由に飛び回る粒子のようなエネルギーの塊からなると結論したのである。

とか

ボーアは、自分の理論とプランクの量子仮説との間にアナロジーが成立すると主張した。はっきり言って、この議論はメチャクチャである。・・・議論が首尾一貫していない。ボーアが、演繹的な推論の結果として量子条件の式を得たとは、どうしても思われないのである。

とか

ド・ブロイの論述は曖昧で、何を言っているのか良くわからない箇所が多い。空間全体に拡がった電子の波についても、具体的に電子とどの様な関係にあるのか明確に説明してくれない。

とか、


読んでいて、量子論の本流にいた人々も

暗中模索で、力ずくで、手探りで、なりふり構わず理論を進めていたのだと、

なまなましく感じました。


何しても、何を言っても、勝てば官軍ですから、いいのですが。



さてこれから、私は、場の量子論の解説に入り・読みます。楽しみです。


あっ。忘れていました

著者は、東海大学、明海大学で非常勤講師を勤めながら、幅広い研究をされている方です。