今ボルツマンのエントロピーを読んでいますが、式を追っかけるのに、もたもたしています。
最近あまり式の追っかけをしていなかったので、式の確認に時間がかかっています。思い違いも沢山有りました。
で今日は少し易しい内容の本を読みます。
「脳の中の水分子」中田 力著 紀伊国屋書店 2006年
中田先生の考えはネットの意識 に有りますが、それがこの本で詳しく書かれています。
中田先生はお医者さんで、新潟大学の教授です。
さて、冗長部を取りはずし、ポイントだけを抜書きします。
まず、麻酔は意識をコントロールできるので、麻酔がどうして可能なのかがわかれば、意識もわかるのだという考えで進めています。
現在、全身麻酔がどうして起こるのかの、その理屈・機序がよくわかっていないそうですが、それでも業界においては「脂肪溶解度説」が通説になっており、
「脂肪に解け易いだけ脳の中に入りやすく、脳に入りやすい薬剤ほど強い麻酔効果を持つという説」
だそうです。
だれが見ても麻酔効果を説明している説でない事は明らかです。
そこで上の説に不満足な先生は、心酔しているノーベル賞を受賞したポーリング博士の「水和性微細クリスタル説」・「水性相理論」を前面に押し出し、ポーリング博士の理論こそが麻酔理論の本命であると力説されます。
この理論「水性相理論」は
「水分子と水分子とがお互いくっつきやすい状態を作ることが、全身麻酔薬の分子レべルでの理屈である」と言う理論で、
水分子と水分子とがくっつけば、クラスターが形成され、水分子のクラスターが結晶水和物をつくるらしいのです。
簡単に言えば、
不活性ガスであるキセノンは全身麻酔を起こす。
キセノンは不活性であるから、ほとんど化学反応を起こさない。
ただ、水分子をクラスター化できる、物理作用が認められる。
だから、麻酔は水分子のクラスター化が原因である。
という理論です。
先生は、ポーリング博士が一度発表しその後自身により撤回されたこの理論を完璧なものとして取り扱っておられます。
なぜならば、
「全身麻酔薬と呼ばれる薬物が例外なく結晶水和物を作りだす」次に
「麻酔効果の強さが、結晶水和物の作りやすさに比例すること」
「そして何より素晴らしい事は、「水性相理論」が、全身麻酔薬に知られている恐ろしく奇妙な現象にも適合すること」、つまり、それは、
「全身麻酔の大気圧依存性」だったのです。
つまり、全身麻酔は、気圧の低い上空の飛行機内ではよく効くのだそうです。
そして同じく、「全身麻酔薬による結晶水和物の形成は、わずかな大気圧の変化で大きく変わるのである」らしいのです。
低い気圧下では、キセノンガスによる水分子のクラスター化が顕著になるようです。
最後に、先生は
「全身麻酔薬とは、意識をとる、言い換えれば、脳の覚醒を抑制する薬物である。全身麻酔がどのようにして意識をとるかの解明は、意識の定義そのものの解明につながるのである。」
「キセノン(全身麻酔薬)は不活性ガスである。したがって、脳にどれだけ入り込んだとしても、そのままでは、どのような化学反応も起こさない。」
しかしキセノンガスは意識をとるし、結晶水和物を作り出す。
大気圧の依存性も認められる。
だから
「人間の意識の根源が、脳の中の水分子の振る舞いに依存している」
「こころの原点が、脳の水分子が示す何らかの現象である事を、はっきりと示してくれたのである。」
と結論付けされています。
「しかしどのようにして」
それがなされるのかは、次回に。