今日の朝刊のトップ記事は

「3歳女児遺棄容疑」、20歳大学生がスーパーのトイレで絞殺事件。

なんとも悲しく、痛ましい事件である。

女の子と学生の接点があったのかなかったのかは書かれてないから、何の目的で殺したのかまったくわからない。


もし防犯カメラがなかったら、犯人にたどり着くのが困難だったかもわかりません。防犯カメラが決め手であったように書かれています。

僕は防犯カメラの設置・拡充には大賛成です。当然、防犯の目的に使われるのを前提にしていますが。

しかし、ある人たちは、反対します。個人情報の保護とか、別目的に使われるのではないかとの危惧があるからとかで。思想信条に圧力をかけられると思っているのでしょうか。思想信条の保護は最大限大事であるという意識は、常識として存在しています。

でも、これらの問題を盾に、社会を守るシステムつくりに制約をかけるのはいけません。思想信条を守るのと社会システムを守る方法に齟齬のない方法があるはずです。

社会を守ることは大事です。



今日は意識のハード関係の論文を。

書籍「脳と計算理論」外山敬介他編 朝倉書店 1997年。

にある

「記憶情報処理と動的神経回路」櫻井芳雄を読みます。

櫻井先生は京都大学の教授です。


この論文の主旨は、

現在隆盛の一途をたどる脳の実験的研究は、ある機能にどの伝達物質が関わっているのか(What)、あるいは、ある機能にどの部位が関わっているのか(Where)に関するものが圧倒的に多い」。それは、fMRIの解析画像が示す、脳血流量の差をイメージングして活動場所を同定しようとするやり方ですね。

思いと脳活動部位の一致を見つけるというものです。


しかし先生は

脳内では何が情報処理の基本コードであるのか、つまり情報表現(符号化)の基本的単位さえまだ明らかでない。そこをまず明らかにし、そこから情報処理様式について解明していく」のを、

目的とされています。

脳内ニューロンの個別の活動から、脳機能研究を進めようと考えられています。たぶん、これが王道だと、僕も思います。


そこで情報の基本単位が

“単一ニューロン説”か“複数ニューロン集団説”か

の切り分けを実験で判断しようと戦略を立てられます。

たとえば脳内でおばあちゃんをあらわすのに、単一ニューロンなのか複数なのかを調べようとします。

常識的には複数説です。


具体的には、

複数のニューロン群活動の同時記録と

複数のニューロン群活動の時間解析をして

判断しようとします。


実験の結果、結論は複数説なのですが。

この論文を読み、実験と考察にいささかの問題があると感じました。


まず、個別的ニューロンの活動を観測するための具体的電極について。ニューロンの大きさは細胞体の大きさで直径数ミクロンから数十ミクロンであるといわれています。また軸策は1ミクロン径で長いものは1mもあるとのことです。

このような細胞単体に電極を立てるのですが

手術により、複数のニューロン活動を同時記録するための5連電極(各電極の間隔は約200μm)と、それを装着したマイクロドライブ(電極をμm単位で脳内に刺入していくための装置)をラットの頭部に取り付ける

らしいのです。

ここで一番大事なのは観測されるべき細胞が脳内で確実に同定されているかという懸念があるのです。つまり観測する細胞、電極の刺さった細胞は、確実にこの細胞であるとの証拠が必要なのです。

論文にはそのことに対し言及がありません。つまり、電極が確かに目的の細胞に刺さったよ、と言う証明が抜けています。


次、またもし、観測する細胞の同定ができたとして、

各細胞間のシナプス結合が観測されていません。シナプス結合は一つの細胞に対し数千から数万結合があるようです。各細胞間の結合が不明なままでの神経細胞の活動で判断をするのは危険なことです。

つまり、観測ニューロンが情報単位のニューロン群内のニューロンであるのか、の考察がされていません。適当に観測された近くのデータからの類推ですから。


裏を返すと、情報の基本単位を構成する複数のニューロン群と無関係のニューロンを測定していないという確実性が書かれていません。ただ近くだから、ただ近くでほぼ同じタイミングで発火活動するから同じグループだとの判断です。

まず明らかになったことは、5連電極のうち隣り合う2本よりはなれた電極間で記録されたニューロンペアの間では、・・機能的シナプス結合がまったく見られなかったことである

といわれます。つまり遠い細胞間(200μm)以上では無関係だというのです。

活動に結合がまったく見られないということの証明もありません。ただ見られなかったと自己判断したとだけの報告です。


このように細かいことを言い出したらどうしようもないので、

先生もそこらはわかっており

実際に動物が情報処理をしているとき・・そのとき回路全体を直接可視化し測定することも、現在の技術ではむずかしい。しかし、部分的であれいくつかの状況証拠をえることができれば・・

状況証拠の積み重ねを期待されています。先生の実験は、状況証拠を得るためのデータ収集なのです。



だから、

“結論ありき論文”とか“意味の後付け論文”にならざるを得ないのが、残念なのです。しかし、現状ではいたし方のないことだとあきらめないといけないのかもしれません。


僕が思うに、やはり、もっと多くの電極で確実なニューロン細胞の実時間観測のできる治具がいります。

脳科学の予算は、このような観測治具・装置の開発に使うべきではないでしょうか。脳科学は装置科学になっていると考えます。装置が命です。


あっそれからもう一つ、参考文献に番号が振ってないので、内容の根拠が得られません。多くの文献が挙がっているのですがどこが著者のオリジナルなのかがわかりません。

そこまで要求すべきじゃないのかもしれません、しょせんこのような本は啓蒙書の域を出ないのだから。

やはり、論文は専門誌、学会誌でないとあかんのかな?