前回は、生命体表象が特殊である事の“さわり”について述べましたよね。憶えていますか?つまり、人工システムの表象とは異なるという事でした。

人工システムとは異なり、生命体は外部環境と、生命体内部の神経構成により決まる相互作用による行動によって生き抜いていきます。

生命体は受け身ではなく。アクティブなのです。

だから、表象の内容も違っているのは首肯できますよね。


次に、生命体単体では生きていけません、外部環境が必須です。外部環境との絡みがあってこその生命体なのです。今までにも多くの人々が声高に言われてきた事です。

そういう生命体内部の神経パターンにどんな表象が得られるのだろうか。それが今回の問題であります。


では、

表象の定義は前回に示した通り、「何かの代理として記号表現が機能すること」になります。

ここで上記の定義文章の内“何かの代理としての”の“何か”が重要なポイントになるんです。代理の内容ですよね。どういうものの代理なのか。色々な意味に捉えられます。



それでは始めます。

生命体にある表象は何の代理をしているのでしょうか。

例えばお湯が“熱い”場合、その徳の内部神経パターン、それは何の代理をしているのでしょうか。


これは明らかに、“熱い”状態を表しています。

でも、誰に表しているのでしょう。

答えは、生命体にとっての情報だから、生命体自身に対して有効な表象です。

それじゃ、その根拠は何なのか。


例えばお湯

熱い時は水蒸気になります

この状態は“熱い”を表象しているのでしょうか

傍から見ている人間にとっては表象として感じられます。

でも水蒸気自身、お湯にとって“熱い”を表しているとは思えませんよね。


でも生命体に対しては何か表象しているように思います。

生命体もお湯と同じく物質の集まりに違いありません。

何が違うのでしょうか。



そこで、生命体と物質たとえばお湯の違いを考える為、

生命の本質は何なのか、の切り口で進化の過程を想像しその根源を探りましょう。


生命は、よく言われるように、遺伝子に乗った物体、子孫を残すことが出来る組織、等々。


少し違う側面から生命体を見ますと、

ある環境の中、“自己個体が維持でき、子孫を残すことの出来る物質の集まり”と言うのは、正鵠を射てなくても遠からずではないでしょう。

つまり“ある特殊な傾向”をもった自然物の組み合わせが生命体で、その特殊な傾向と言うのが“個体維持、子孫を残す”という事です。

ある特殊な傾向をもった自然物の組み合わせが“それ自身の型を保持させ、同型を作り上げること”が出来るのです。


この生命体は遺伝子を有しているので、進化します。

進化は“ある特殊な傾向”を強調するように変わっていくのです。

環境に対する適応力の強化の方向に。

生き抜く力の強化、子孫を残す力の強化の方向に。

これが、いわゆる進化の圧力なのです。


ということで、

進化の圧力により、外部環境を確実に把握できるように神経系が変化していく事は、容易に想像出来ますよね。

外部環境を確実に把握できれば、生き抜く力、子孫を残す力が強化されるのですから。


具体的には、温度、色、音、明るさ、さらに温度差、色に差等をもっと明確に分別出来るようになります。(これは物理的に。)

情報の差が明確になれば、その情報がその生命体に及ぼす影響を直接感じることが出来るように進化します。

例えば、熱い場所は良くない場所、明るいところはいいところ、物にぶつかれば逃げる、と言うように、行動の指針が得られるようになります。

外部からの感覚信号により、行動が決められるようになるのです。


そのためには、上述したように、内部神経パターンが必要になります。

内部神経パターンは、感覚信号と筋肉活動の橋渡しをし、自分のおかれている立場を理解し、自分を保全する行動を取るようになります。


そこに意味が創成されるのです。(これも物理的に。)

そことは、感覚入力と内部神経パターン、出力である筋肉活動すべてで、そこに意味が創成されるのです。


これらにより、内部神経パターンが外界を表象していると言える根拠になります。

内部神経パターンは、外界環境と筋肉活動との連鎖のより進化・完成したもので、

これらの組合せから、意味が立ち上がってきたと考えられます。


これが、意味のない自然界から生命体ができあがり、そのローカルな生命体の内部に外界を表象できる神経パターンが作られ、全体で意味が創成されるのです。


物質からなる自然界から、物質の特殊な組合せから、

進化の圧力を受け、

意味が創生され、

行き着くところで、(自己が密着している)意識が創成されたのです。(これも物理的に。)