五大シャトーを擁し、格付で知られるボルドーのメドック地区。

その格付の筆頭と呼ばれるのがシャトー・ラフィット・ロートシルトだ。

ウイスキーでいうと、スペイサイド地区のマッカランのようなものだろうか。

もちろん、マッカランよりグレンリベットが好きという人がいるように、ラフィットよりマルゴーが好きという人もいる。

しかし好みをのぞけば、一般的な認識ではラフィットが筆頭だろう。


そのラフィットはメドックのポイヤック地区にあるが、同じポイヤックにラフィットが所有するもう一つの格付シャトーがある。

それがシャトー・デュアール・ミロンだ。


ラフィットが一級に格付されているのに対して、デュアール・ミロンは四級に格付されている。

しかしラフィットと同じ醸造チームが手掛け、醸造哲学を共有する。

しかし価格は安く、ラフィットの1/10ぐらいの値段で買える。

ウイスキーで例えるとマッカランと同じオーナーが、同じスペイサイド地区に所有していたタムデューのようなものだろうか。


今やタムデューはオーナーが変わっているし、マッカランとはそこまで似ているとは思わない。

また、マッカランとタムデューよりは近いが、個人的にはラフィットとデュアール・ミロンは別物だと思う。

とはいえ、ラフィットが所有するポイヤックのシャトーだけあり、作り出されるワインは素晴らしいボルドーであることは間違いない。


デュアール・ミロンは最近だと2018ヴィンテージを気に入って、多めに買った。

追加でオーダーできないか確認したら、2018は売り切れ2019ヴィンテージならあるという。

2019はボルドーのテイスティング会で試飲したが、並んでいた他のポイヤックのシャトーに比べれば印象が薄かった。

しかし、ワインは1本飲んでみないと分からないし、シチュエーションに依ったのかもしれないと2本購入した。

少し長めのセラーリングをしてそのうちの1本を開栓、テイスティングしてみた。


なお、輸入元は大雅でヴィンテージは2019、グラスはシュトルツル・ラウジッツのギブリ ボルドー22ozを使用した。


【テイスティング】

甘やかなドライプルーン、カシス、しっかりと焼いた樽のオーク、ほんのり酸味のあるブラックプラム。

革の車のシート、甘いバニラクリーム、甘草、ドライハーブのニュアンスが少し、インクのようなニュアンス。

エレガンスがあり柔らかい。

時間がたつとほんのりパプリカ様の野菜の香り、シナモン様のスパイス、スミレのフローラルさが香り、煮詰めたブラックベリージャム、ミルクチョコレートが出てくる。


仕上がりの良さを感じる上質なポイヤックのワインで、今のタイミングで飲んでも完成度が高い。

味や色は濃さが強いが、ボディはそこまでの厚みはなく口当たりはシルキー。

女性的で貴婦人のような佇まいがある。


カベルネ・ソーヴィニヨン70%、メルロ30%のセパージュだということだが、体感的にはもう少しメルロ比率が高い印象。

2018に比べると甘味が強く感じたが、これからの長い熟成にも耐えられるだろう。


立ち位置的にはイージードリンキングできる価格帯ではないし、1万円近くする格付ワインとしてはカジュアルな印象。

『THE PAUILLAC』という押し出しの強さもなく、クラシカルなボルドーで品はあるが、使いどころが難しく玄人好みだ。

これだけのクオリティなのに、いまいち影が薄いのはそんなところなのかもしれない。
個人的にもこのヴィンテージの優美なポイヤックなら、もっと安く買えるピション・ラランドのセカンド、リゼルヴ・ド・ラ・コンテスを選ぶ。

とはいってもエチケットも佇まいも美しく、ベクトルは少し違うがこの先にラフィットがいるのは感じられる。
優しいポイヤックを探している、という人には勧めたいデュアール・ミロンだ。

【Verygood!!】