今年のボルドーのアン・プリムールもだいぶ落ち着いてきた。

今年は2023年収穫のブドウでつくるワインが出回る年だが、ベト病の影響で収穫が減ると聞いていた。


しかし、左岸のボイヤック、サン・テステフ、サン・ジュリアン、マルゴーや、右岸のポムロールはむしろ前年比増となったらしい。

それが価格にも反映され、去年の高騰から価格が元にもどったシャトーも多かった。


狙っているところは概ね評論家諸氏のスコアもよく、五大シャトーも含めたビッグなワインやデイリー・ユースにも使えるワインを買った。


ボルドーという産地は世界でトップといっていい銘醸地で、層の暑さは群を抜く。

同じ品種のブドウをブレンドしていながら、味わいに各シャトーの個性があり、長期間の熟成にも耐え得るワインを産み出す。


かと思えばコストパフォーマンスに優れたワインを生み出し、ソーヴィニヨン・ブランでつくる白ワインも安くていいものが多い。

開栓してすぐに美味しく、家で気軽に飲むのに財布にも優しい。

2,000円台のワインなら2日に分けて飲めば、1回1,000円台で楽しめるのだ。


15ミリのウイスキーでも最近はBarで飲めば、2,000円を越えるものが多い。

そう考えると日常的に多く飲む人や、安い時期にウイスキーを買ってストックしている人は、今ウイスキーを選ばないだろう。

お金を出せる、出せないという話ではなく、満足度が明らかに下がっているからだ。


もちろん気になるものは飲みに行くし、自分が妥当だと思ったら買う。

しかしその数は相当減っていて、安くておいしい今簡単に買えるワインにシフトしてしまう。


このワイン、2019年のシャトー・オー・ムノーもそんなワインのひとつだろう。

銘醸地メドックの対岸にある右岸の産地、ブライ・コート・ド・ボルドーに位置する。

広い地域ではあるが、12~15haぐらいの小さな生産者が軒を連ね、右岸らしくメルロー主体のワインをつくる。

新しい試みを試す若い生産者も多く出てきており、面白いものが出てきている印象がある。


しかし、いかんせん数が多すぎるため、この地区だけを集めた試飲会みたいなのがないと、いいものに当たりづらい。

となると、インポーターや酒屋の情報、達人の口コミなどが頼りになるのだが、このワインは信頼している酒屋である花井屋が勧めているので買った。


最初の案内にはラフィットっぽいと書いてあったような記憶があるが、今はラトゥールっぽいに変わっている。

1本目を飲んだときに、言わんとせんことはわかるがさすがに盛ってる感があるなあ、と思った。

しかし、2本目を飲んでラフィットからラトゥールに変わっている?のを見て、腹落ち感があった。

そして追加で3本注文した。


格が高くないワインはボトルの個体差がまあまあ大きいので、1本飲んだくらいでは分からない。

間を置かずに2本目を飲み、時間を空けて3本目を飲んで、ようやく姿がとらえられると思う。

しかし、安いワインでそれだけ飲み込もうと思えるものは多くないが、このワインはその価値があると感じた。


その2本目のオー・ムノーの2019ヴィンテージのテイスティングを記載する。

なお、輸入元は大栄産業、グラスはシュトルツル・ラウジッツのギブリ ボルドー22ozを使用した。


【テイスティング】

ブラックチェリー、プラムなどの酸味のあるフレッシュな果実、生のタバコの葉、若いなめし革。

タンニンは丸みを帯びて柔らかく、カカオ比率高めで酸味のあるチョコレート、コーヒーの実、仕上がりの早さが印象的。

ザクロの妖艶な果実味、ハイビスカスのフローラル、ローズヒップティー、舌に重なるスパイスはブーケガルニ、ヒマラヤの岩塩とナツメグ。


メルロー中心の仕上がった若いワインだが、高級なワインにある妖艶さやエレガントさがある。

作付けを見るとカベルネ・フランはないし、味的にもカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドしている印象。

それが少し左岸っぽい印象をもたらしているのだろう。


オフヴィンテージのラトゥールのサード・ラベルに、ちょっとポンテ・カネっぽいニュアンスが加わるようなイメージだろうか。

あくまで佇まいという点に於いてだが、五大シャトーを持ち出したくなるのは分かる。

天然酵母由来のフレッシュな果実感と酸味、ミディアムボディの柔らかさがありメルロー主体のため、醤油を使った家の和食にも合わせやすい。

これが税前2,500円はかなりクオリティが高いし、確かに勧めたくなるだろう。


つい先日、ドメーヌ・ソガの格落ちしたメルローのちゃぶ台ワインを家で飲み、コストパフォーマンスが高いなと思った。

それが税前1,800円くらいだったが、これはそんな次元ではないくらい価格と味が、いい意味で乖離している。

日本のワインも相当進化しているが、ボルドーもまたそれを上回るくらい進化しているのだ。

それを再認識させてくれるワイン。


もちろん長く熟成させて楽しむとか、ねじ伏せるような迫力や、時を停めてしまうような崇高さがあるワインではない。

しかし家で普段飲むのに、このクオリティでこの価格帯のメルロー主体のボルドーは、手放しに称賛できるレベルだと思う。


この手のボルドーは、夏でもいつもより2度くらい冷やして飲めばこれからの季節も楽しめる。

使い勝手がいろいろ思い浮かぶ、ハイコストパフォーマンスのデイリー・ボルドーだ。


【Verygood!!!!】