暑くなってきたこれからの季節は、スパークリングワインの出番が劇的に増える。

しかし、スパークリングワインの王者、シャンパーニュは価格の高騰が著しく、皆が安い価格でのポスト・シャンパーニュを探しているのではないか。

候補になるワインは限られているが、シャンパーニュと同じく製法が伝統的な、瓶内二次発酵のものが有力な候補になる。


瓶内二次発酵のスパークリングでよく知られるのは、フランスのクレマン、スペインのカヴァ、イタリアのフランチャコルタなどがあがるだろうか。

しかし、フランチャコルタは価格的にはシャンパーニュとたいして変わらない。

低価格でということになるとカヴァ、そしてクレマンではないだろうか。


クレマンはフランスの発泡性ワインで、シャンパーニュと同じく瓶内二次発酵でつくる。

クレマン・ド・ブルゴーニュ、クレマン・ド・ボルドーのように、地域地域の名前がついて、8つのAOCのクレマンがある。

使われるブドウはその地域によってその地域の品種が定められていて、例えばブルゴーニュだとシャルドネやピノ・ノワールでつくられる事が多い。

それゆえ、クレマン・ド・ブルゴーニュも今や価格があがっていて、有名生産者のものはシャンパーニュとたいして変わらなかったりもする。


価格が安くて味もいいクレマン、となるとラングドック地方のクレマン・ド・リムーだろう。

ラングドックは安くていいワインが多いが、クレマンも例外ではない。

しかも使われるブドウ品種はシャルドネがメインで、シュナン・ブランやモーザック、ピノ・ノワールを補助品種として使う。

リムーは、実はスパークリングワイン発祥の地として知られ、その歴史は500年にも及ぶ。

1700年にドン・ペリニョンが生み出したと言われるシャンパーニュよりも歴史が古く、世界最古のスパークリング・ワインと言われている。


個人的なお気に入りはベリー・ブラザーズ&ラッド(BBR)の、ベリーズ・クレマン・ド・リムーだ。

ブドウ品種はシャルドネが70%、シュナン・ブラン15%、モーザック15%で、メゾン・アンテッシュに委託して作っている。

アンテッシュは家族経営で6代続く名門らしい。

定価は税込3,000円を越えているが、セール時の会員価格では税込1980円と、かなり使い勝手のいい価格になっている。


ちなみにメゾン・アンテッシュのプロパー品であるクラシック・ブリュットは、税込1,800円強で売っている。

こちらはセパージュがシャルドネ70%、シュナン・ブラン20%、モーザック10%だという。

法的には9ヶ月でいいクレマンだが、シャンパーニュと同じく最低18ヶ月は熟成させるらしい。

3,000円出すならプロパー品でいい気もするが、単一ヴィンテージかNVかの違いなどがあり、BBRが監修している分、品質が担保されているのだろう。

試しに買って飲み比べても面白いかもしれない。


そのベリーズのクレマン・ド・リムーをキリキリに冷やして自宅で飲んだ。

そのテイスティングを記載する。

なお、グラスはザルトのユニバーサルを使用、輸入元は当然ベリー・ブラザーズ&ラッドだ。



【テイスティング】

完熟した瀬戸内レモンやライムの洋な柑橘、ラ・フランスっぽいネットリとした洋梨、富士っぽいリンゴ、シャインマスカットの皮、多彩な果実味がある。

青っぽいハーバルなニュアンス、スイカズラの花、柔らかく溶け込んだミネラル、軽くブリオッシュの香り。

さらっとしたレンゲのはちみつ、クリーミーなテクスチャー、酵母の香りは強くなく、かなり冷やしたためか泡は繊細できめ細かく、シャンパーニュとは違う軽やかでアロマティックなニュアンス。


ブドウ品種が違うため、シャンパーニュとはフレーバー構成は違うが、瓶内二次発酵らしい繊細さがあるスパークリング。

セール&会員優待の税前1,800円は、2,000円以下の価格で買えるスパークリングの中ではトップクラス。

圧倒的に丁寧に作られているし、明るい華やかな果実味が嬉しい。


クレマンである以上は1,000円台で買えるのが望ましいし、ライトで初夏や夏の暑い日に冷やして飲みたい。

先日はBBQに持参し、キリキリに冷やして使い捨てのプラスチックのコップで飲んだ。

そんな雑な飲み方でも、素性のよさやクオリティの高さがわかる上質なクレマンで、クレマンの鑑のようなワインだと思う。


BBRのすごいところは、デイリークラスの低価格でも丁寧にいいワインを選んでいるところではないだろうか。

それを実証する安心のベリーズ・ラベル、上質でコストパフォーマンスに優れた、素晴らしいクレマンだ。


【Verygood!】