開けすぎた自宅の開栓済みボトルを消費する目的のラストドラム。
今回は2009年ヴィンテージ、2018年スペシャルリリースのタリスカー8年だ。
タリスカー8年といえば、かつて銘品と呼ばれたオールドボトルで知られる。
スタンダードボトルは10年になって久しく、2018年にスペシャルリリースで8年熟成が復活した。
オールドの8年が加水だったのに対してカスクストレングスだし、味わいのベクトルも違った。
しかし、今できるベストを尽くして8年を再臨させようとする凄みは感じられるボトルで、それは味わいからも十二分に伝わってきた。
ディープにチャーした、ファーストフィルのアメリカンオークのバーボン樽で熟成したのがその現れだろう。
タリスカーは、リフィルのバーボンカスクで熟成させるのが基本だったからだ。
しかし、ディープにチャーしたとあるが、焼いた樽の強い樽感で濃い味に仕上げたのかと思いきや、それは全くなかった。
8年熟成とは思えない仕上がりのよさに、それ以上に熟成の長い原酒を混ぜているのではないかと思ったが、2009のシングルヴィンテージだという。
この味わいをシングルヴィンテージで実現できる樽はそれほど多くなかったのだろう。
このボトルのアウトターンは、短い熟成の割に少ないと感じる4,680本だ。
個人的には、このウイスキーは丁寧に選ばれ、想いが味わいと共に伝わる銘ボトルだと思う。
現にWhiskybase上では、タリスカーのオフィシャル8年でシングルヴィンテージは、後にも先にもこのボトルだけだ。
私はその作り手の想いはきちんと拾えるようになりたいし、そのためにテイスティングスキルを磨いていきたいと思っている。
味も良く想いのつまったこの酒に対し、これはかつてのタリスカー8年ではない、と否定するような不粋な人間にはなりたくない。
このボトルを最初にblogに掲載したのは2018年9月なので、約5年8ヶ月で飲み切りとなった。
その間に飲んだいろいろなタリスカーと比較するため、都度家に帰ると復習のため引っ張り出して飲んできた。
その度に本当に良く作られたウイスキーだな、と思ったものだ。
また時代は流れリリースから約6年が経つが、特にボトラーズものは短い熟成のものが増え、このウイスキーの8年での仕上がりの良さが際立つようになってきた。
そのタリスカーのラストドラムのテイスティングを記載するため、最後に改めてじっくりと飲んでみた。
【テイスティング】
熟したオレンジやレモン様の柑橘、ヨード、モカコーヒーチョコレート、しっとりとした麦のパンの甘味。
ホットでスパイシーなレッドペッパー、ハイプルーフの厚み、ブドウ山椒やブラックペッパー様のスパイス、焼いたアメリカンホワイトオーク。
コクのあるバニラクリーム、バニラビーンズ、石灰様のミネラル、しっかりとスモーキー、ピートの苦味、長い余韻。
熟成による複雑味がある酒というよりは、ストレートでパワフル。
しかし滑らかで厚みもあり、8年の熟成とは思えない。
当時1万円弱だったが本数制限もあり、3本しか買わなかった。
今や35,000円くらいで売られているし、もっと買っておくべきだったと思う。
なお、これ以降もディアジオスペシャルリリースでは、短熟のタリスカーがいくつかリリースされた。
いいものが多く8年熟成ものも、2020、2021と2本出ていて複数本買ったものもある。
しかし、ラベル的にはこれが一番好みだし味も本当にうまいなあと思う。
リリースから6年でこれなら、30年位経った2050年頃には、このボトルは果たしてどういう評価をされているのだろう。
自分でそれを確認できるかはわからないが、きっと素晴らしいウイスキーだといわれているに違いない。
確信的にそう思える。
どんどん良くなって、ラストドラムも非常においしく、十二分に楽しませてもらった。
このボトルの紙箱の裏ラベルには『LEGEND REBORN』という文字が刻まれている。
それに恥じない復活のタリスカー8年だ。
【Verygood/Excellent!】