北ローヌを代表する赤ワインのAOCといえば、エルミタージュだろう。

しかし北ローヌにはもう一つ、エルミタージュと双璧をなすと言える赤ワインのAOCがある。

個人的にはそう考えているが、その片割れがコート・ロティだ。


エルミタージュに比べたら知名度は大きく劣るかもしれない。

しかし、コート・ロティのシラーはブルゴーニュのピノ・ノワールに匹敵するほどエレガントだ、と言われる。

北ローヌの最北端に位置するコート・ロティは、フランスにおけるシラー栽培の北限だ。

本来なら冷涼過ぎて、シラーの栽培に向かない気候らしい。

それを日当たりのいい南東向きの急斜面にブドウを植えることで、酸度を保ちかつ熟したブドウを産み出している。


それがコート・ロティ(焼けた丘)と呼ばれるゆえんだが、急斜面ゆえに機械化できず手作業に頼らざるを得ない。

そのため、畑の面積は小さく生産量も少ない。

それも知名度が低くなる一つの要因となっていることは否定できない。


しかし個人的には大好きなAOCで、味わい的にはブルゴーニュとエルミタージュのどちらに近いかといわれると、ブルゴーニュだと思う。

特に南に位置するコート・ブロンドは砂質土壌で、柔らかく優美でよりブルゴーニュに近い。


このワインはそんなコート・ロティのワインで、作り手はジョルジュ・ヴェルネイだ。

ジョルジュ・ヴェルネイは1940年にフランシス・ヴェルネイが設立したドメーヌだ。

2代目のジョルジュ・ヴェルネイは、30年コンドリュー名称保護委員会の会長を務め、コンドリューの父と呼ばれたらしい。

97年から三代目を継いだクリスティーヌが、コート・ロティをラインナップに加え、コンドリュー並みのクオリティに高めているという。


このコート・ロティ・ブロンド・デュ・セニョールは、95%のシラーに5%のヴィオニエをブレンドしてつくるらしい。

最新のヴィンテージはネットショップでは2万弱するようだが、なぜか古いローヌが安いひらまつのオンラインで税前8,000円で売っていた。

しかも少し熟成していそうな2011ヴィンテージで、初めて飲む生産者だからとりあえず1本だけ買った。


そのワインを自宅で開栓してテイスティングした。

なお輸入元はひらまつで、ヴィンテージは2011。

グラスはリーデル ヴィノム ピノ・ノワールを使用した。


【テイスティング】

香り立ちは非常にエレガントで、アメリカンチェリー、プラム、巨峰の皮。

柔らかく溶け込んだスパイスは細かく挽いた黒胡椒のパウダー、苦味のある山菜、しっかり目に焼い樽のウッディネス、ザクロっぽい果実。

ボディはライトミディアムで、少し紙巻きたばこの香り、華やかさのあるスミレのフローラル、柔らかいなめし革。


ブラインドで飲んだらローヌのシラーと答えるかはかなり微妙。

どちらかというとスパイシーなブルゴーニュと答えそうだ。

堅牢なエルミタージュとは対照的で、エレガントで柔らかいコート・ロティ。


普通に今同じクオリティのワインを買うと、この値段では買えない。
しかもほどよく熟成しているため、飲み頃のお買い得ワインだと思う。
ブラインドで感想を聞いてみたいし、コート・ロティの在庫が手薄なので2本追加した。

なお、ジョルジュ・ヴェルネイのトップキュヴェはシラー100%のようだが、このキュヴェの柔らかさはブレンドされたヴィオニエが効いているように思う。
これから数十年熟成するようには思えないが、比較的早く飲むならエルミタージュよりもコート・ロティが楽しめる。

そう思ったエレガントで華やかなジョルジュ・ヴェルネイのコート・ロティだ。

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