家にある開栓済みボトルの消費を目的とした、ラストドラムのテイスティング。

今回は2017年11月開栓とおぼしきスプリングバンクの15年だ。

約6年半という期間で飲み切りとなったが、時間をかけたのには理由がある。


スプリングバンクの15年は、小ロットで年に数回ボトリングされる、46%加水のスタンダード品だ。

15年は100%シェリーカスクで熟成された原酒を使う点が、他のスタンダードものと違う。


しかしスプリングバンクのシェリーカスクは、いいものはシングルカスクなどで出され、残ったものが15年で出される印象が強い。

そのため、シェリーカスクのネガティブなフレーバーが強く出ているものが多く、買いづらい印象がある。

私も15年よりは、カスクストレングスでバッティングしてつくる12年、同じ46%だが毎バッチでセパージュが違う18年に予算をふりがちだ。

また、開けてすぐ飲んでもおいしいものをとなると10年を選ぶ。


しかしそれなのになぜ15年を買ったかと言うと、この15年はラベルデザインが変更になったから、それが理由だった。

だが開栓した頃は私のイメージ通り、シェリーカスクのオフフレーバーがかなり強かった。


シェリーカスクのオフフレーバーは、一般的にサルファと呼ばれる硫黄系のフレーバーが出る。

だがサルファにも種類があり、樽由来と思われる硫黄はよほど強いものでなければ、経年で抜けることも多い。

しかも抜けるとジャム感が増して、イチゴジャムやオレンジマーマレードに変化する印象がある。


だが、ガンパウダーとか煎った黒ゴマ、ゴマ煎餅と呼ばれるものは抜けづらい。

なので、おそらく蒸溜由来なのではないかと思っているし、これが出ているボトルは個人的には買わない傾向がある。


このボトルはその両方が存在したため、時間経過による変化をみようと、時間をかけて飲んでいた。

しかし概ね硫黄系は抜けきったしこれ以上変わらなそうな印象がある。

もうそろそろいいだろう、と介錯することにした。


なおボトルの底の近くには、14/08/2017 17/379と印字されている。

おそらくボトリングされた日付が2017年8月14日、このバッチのNo.が17/379ということなのだろう。

逆算すると、だいたい2002年7月より前の蒸溜ということになる。


ちなみに、ウイスキーベースを見ると新ラベルだからか、2017年には15年ものは7月~12月にかけて、毎月違うロットがボトリングされている。

中身が同じでボトリングした日だけが違うのか、中身も違うのかは定かではない。

だが恐らく後者だろう。

そのため2017詰めの15年は飲んだけど、私のテイスティングと全然違う印象だった、という人もいるかもしれない。

あくまでも、日本に正規輸入された17/379のテイスティングだという事を付け加えておく。

  


【テイスティング】

香りには少し硝煙やガンパウダー、煎った黒ゴマ、焦がした麦芽、酸味のあるコーヒー、ほんのり紙感。

甘酸っぱいオレンジマーマレード、ミルキーなコク、シガーチョコレート、潮風やブリニーな汐辛み。

熟した市田柿、スモークやヨード、オロロソシェリー、ニスを塗ったマホガニーの家具、焼いた黒胡椒のスパイシーな苦味。

余韻にはドライアプリコット、コーヒーの苦味、噛み応えのある長い余韻。


ガンパウダーや黒ゴマはあるにはあるが、この状態で飲んだら苦手な人以外はスルーできるレベル。

苦味やスパイシーさはあるし、特別感のある上質なシェリーカスクとは言えないかもしれない。

だが赤錆や生臭い硫黄はなく、十分に魅力的なシェリー系のスプリングバンク。


6年半の月日の中で、1/3位に減った状態を長く維持していたためか、ピークを越えて力強さは失われていく段階に入った印象。

未開栓でこの段階に到達するには、20年は必要なのかもしれない。


しかし、その間でサルファ系のフレーバーは抜けるだろうし、やはりスプリングバンクは長熟型のウイスキーだと痛感する。

また、青田買いで買ったものにサルファがいたとしても、よほど硫黄が強くなければ10年未開栓か開栓3~4年では抜けるのが改めてわかった。
気長に付き合えばいいと思う。

上記のようにこのスプリングバンク15年は、いろんな気付きをもたらしてくれた。
今や高額で手に入れづらくなっているが、やはりスプリングバンクのシェリーカスクはいい。
そう思える15年熟成もの、ラベル変更後の1stロットだった。

【Verygood!!】