新しくウイスキーを開栓しようかと思い、ふとウイスキー棚をみてみた。
ずいぶんと開栓済みボトルが多く、無計画に開けてきた弊害が出ている。
1本開けるなら、20本くらい減らしてからにしないとたまる一方だ。
同じものを安価で手に入れるのが困難なものあるため、少なくなっているボトルの最後の方のテイスティングをつけていこうと思う。
今回はこのアイル・オブ・ジュラの8年。
70ブルーフ、26 2/3液体オンス表記のオールド・ボトルだ。
ジュラ島唯一の蒸溜所である、アイル・オブ・ジュラ。
創業1810年をうたうが、実体は1963年に一からつくられた蒸溜所で、以前の蒸溜所とは繋がりがない。
とはいえジュラの60年代70年代蒸溜は、プティ・ボウモアともいうべき、潮とフルーツの感じられる秀逸なウイスキーだ。
しかし、80年代以降の蒸溜は少しニュアンスが変わり、油粘土っぽいニュアンスが出ている。
その後、2010年蒸溜くらいから良くなっていて、1992の長熟などよいボトルも出てきている。
ただ、個人的にはそれらはオールド・ジュラとは違うベクトルの酒だと思う。
端的にいうとフルーティーからモルティに変化し、朱肉っぽさがで出てきたと捉えている。
その古き良きジュラを代表し、比較的手に入れやすいのが、通称ジュラッパチと呼ばれるノンヴィンテージの8年だ。
ロットに寄り多少の差はあるが、概ねフルーティーな長熟度数落ちのボウモアみたいなニュアンスを持っている。
プラスチックのスクリューキャップゆえか、短熟加水の割には変化に強く、壊れているボトルに当たった事はない。
このボトルもブログによると2020年12月に開栓しているようで、約3年3ヶ月で飲みきりということになる。
そのラストショットのテイスティングを記録する。
【テイスティング】
オールドスタイルのスモーク、ほんのりトロピカルフレーバー、きれいに熟成したシャルドネのような白ブドウの果汁、潮っ気が強くブリニー。
和三盆の甘さ、ほんのりパフューム、バニラのホイップクリーム、砕けて柔らかくなったミネラル感。
さらっとした蜂蜜感、生姜のきいた冷やし飴、余韻にオールドピート、ドライなモルト感。
クリスタルに反射する陽の光、磨き抜かれた熟成シャブリのような旨み、味覚糖の純露、余韻に残るピートは強め。
土屋守のウイスキー大全には、再建時に隣のアイラと差別化するため、ノンピート麦芽を決めたとある。
しかし、ノンピート?と思うフルーティーでオールドピート感漂う加水のボトルで、やはりボウモアと共通する島のウイスキーのニュアンスがある。
開栓時のテイスティングをみると、もう少し麦感や飴感が強かった様子。
密閉度が高いからか緩やかにほどけて、いい感じに仕上がっていた。
8年表記だが、おそらく最も短いものが8年なだけで、もう少し長い熟成のものが使われているのだろう。
加水でも十分に味わい深さと多彩さがあり、蒸溜所の個性が感じられる。
それが銘品と呼ばれる所以だろう。
この頃は今のようにピートは焚いていないはずだが、ジュラはそれでいいというのを示してくれる。
やはりジュラッパチはいい。
確かもう1本あるはずだし、70年代、80年代蒸溜の長熟ジュラもまだ何本かは手元に在庫があるので、それを開けたときに並べて飲んでみたい。
とても楽しませてもらえた、いいオールドボトルだった。
【Verygood/Excellent!】