世界中でつくられている発泡性のスパークリング・ワイン。
頂点に君臨する王者はフランスはシャンパーニュ地区でつくられるシャンパーニュだ。
シャンパーニュは別格として、それに続くものは何だろう?
こう聞かれると何と答えるかは、様々な意見があるだろう。
私の中では、いずれシャンパーニュと肩を並べるのではないか?と思うワインがある。
それが英国でつくられる、イングリッシュ・スパークリングだ。
決して長くないその歴史を考えると、そのクオリティは驚異的だ。
それには以下の要素が関係している。
一に温暖化や気候変動により、40年前のシャンパーニュとほぼ同じと言われる気候になった天の恵み。
次にドーバー海峡を挟んで地続きのシャンパーニュと同じ、石灰質土壌を持つ地の利。
最後がシャンパーニュの大手メゾンが進出し、元々ワインの評価の先進国である人の力。
この3つが噛み合い、驚異的なスピードで進化を遂げている。
今後リザーブワインの蓄積がなされれば、シャンパーニュと双璧をなすワインとなるだろう。
個人的にはそう確信している。
このワインは、作り手がガズボーン・エステート、ミレジム入りのブラン・ド・ノワールの2018ヴィンテージだ。
ブラン・ド・ノワールとは、黒ブドウのみで作る白スパークリングの事で、このキュヴェはピノ・ノワール100%でつくっている。
ガズボーン・エステートは2006がファースト・ヴィンテージで、初リリースが2010というまだ新しいワイナリーだ。
ケント州に61.3haの畑、ウェスト・サセックス州に32.1haの畑、合わせて93.4haもの畑を所有するという。
シャンパーニュと同じシャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエを栽培し、同じ瓶内二次発酵で作る。
しかも36ヶ月の瓶内熟成という、プレステージュ・シャンパーニュ並みの瓶内熟成後、澱引きして出荷する。
このワインは試飲会で、並みいるシャンパーニュの中で確かな存在感を放っていた。
個人的にはRMのミレジム・シャンパーニュなら2万円はするだろうと価格をみたら、4がけくらいの値段だった。
当然複数本購入しセラーリングしていたが、改めて飲んでみたいと開栓した。
なおヴィンテージは2018で、輸入元はベリー・ブラザーズ&ラッド(BBR)。
グラスはザルトのユニバーサルを使用した。
【テイスティング】
青リンゴ、野イチゴ、酸味のあるアプリコット、グレープフルーツのワタ。
しっかりした石灰っぽいミネラル、バニラクリーム、ブリオッシュ香、ライムの皮、スイカズラの花。
フレッシュな酵母感、パイナップル、パッションフルーツ、繊細でキメ細やかな泡、しっかりとした酸味。
輪郭がくっきりしていて、冷涼な地域の澄みわたった果実味と酸、オーガニックに近いブドウのフレッシュ感。
しっかりした酸味が下支えするため、シャンパーニュとは少し違うかもしれない。
しかし、同じクラスの味わいをシャンパーニュに求めると2万円くらいするのではないか。
ファーストヴィンテージから20年経っていないとは、とても思えない。
素晴らしいブラン・ド・ノワール、素晴らしいスパークリングだと思う。
ガズボーンはブラン・ド・ブランも素晴らしいが、このブラン・ド・ノワールはそれにも増して好みだ。
艶があり果実味や酸が生き生きしている。
輸入元であるBBRの試飲販売会で飲んだが、また新しいヴィンテージが出たら試してみたい。
おそらく、さらに質が向上しているように思う。
イングリッシュ・スパークリングはナイティンバー、ハンブルドンなど他にも素晴らしいワイナリーがある。
それらと切磋琢磨しながら、どんどん良くなっている。
その中にあっても特別感のあるワインで、コストパフォーマンスも申し分ない。
やはりイングリッシュ・スパークリングは、ゆくゆくはシャンパーニュに匹敵するワインに成長するだろう。
そう強く思う素晴らしいブラン・ド・ノワールだ。