ブルゴーニュやボルドー、シャンパーニュと並ぶが、知名度で劣る南仏の銘醸地といえばコート・デュ・ローヌだ。

しかしその他の地域と比較しても、勝るとも劣らないワインを作り出す。


ローヌも北と南で主に栽培されるブドウや、つくられるワインが違う。

北ローヌではシラーが主に使われ、シラー単一や主体でつくられる事が多い。

北ローヌを代表する地区といえば、エルミタージュだろう。

しかし、飲むまでに時間を必要とするのに加え、料理や人を選ぶ難解さがある。

そこが爆発的に評価されない理由なのかもしれない。


エルミタージュで使われるシラーは、コート・デュ・ローヌ原産で、今や世界的に栽培される国際品種だ。

フランスについで生産量が多いのがオーストラリアで、オーストラリアではシラーズと呼ばれる。


かたやオーストラリアの隣国であるニュージーランドでは、シラーの生産に占める割合は全生産量の0.5%と少ない。

しかし、時に傑出したシラーを産み出すといわれている。

そのうちの一つと言われるのが、ワイヘキ島にあるマン・オー・ウォーというワイナリーの生み出すワインだ。


ドレッドノートと名付けられたこのワインは、酒屋が勧めていたので3本買って、1本は開けてすぐ飲んだ。

エルミタージュを彷彿させるパワフルなのに繊細なシラーで、エルミタージュよりやや劣るとされるクローズ・エルミタージュ、サン・ジョセフやコルナスより洗練されている印象だった。


私が買った価格は税前で6,000円弱と、J.L.シャーヴ・セレクションのエルミタージュ ファルコネと大差がない。

と思って今の価格を確認したら、ファルコネは今や8,000円から12,000円くらいするようだ。

あわてて某所に6,000円強で残っている、2012ヴィンテージを買い足してみた。


ちなみにエルミタージュなら、2018や2019ヴィンテージのものを開けようとは思わない。

早飲みができるといわれてもガチガチに硬いことが予想され、デキャンタージュが必要だからだ。

数年前、ファルコネの2010ヴィンテージを持ち寄り会に持参したら、ソムリエは心配になるくらいブンブン振ってデキャンティングした。

しかし、注がれたワインにはそれでもまだ硬さが残っていた。


それに比べれば、このドレッドノートは少しは早飲みできるかもしれないが、十分に堅牢な印象がある。

家でシラーを飲みたくなり、3本買ったうちの2本目を開栓してみた。

なおヴィンテージは2019、輸入元はリブ・コマース。

グラスはボルドー型も試したが、最終的にはリーデル ヴィノム ピノ・ノワールを使用した。



【テイスティング】

煮詰めたイチゴジャム、塩水につけたブラム、しっかり目の樽感、細かく挽いた白胡椒。

黒ブドウの皮、新しいレザーのベルト、ワックス、酸味のあるドライプルーン。

ダークチョコレート、ブラックベリー、しっかり目のタンニン、焦がしたオーク。

骨格が頑強で、スパイシーでオーキー、黒に近いフルーツの印象と少しのヨード感やスモーク。

ブドウの茎、甘草、クローブのようなスパイス。


シェリーカスクのウイスキーとフレイバー構成は似ているが、シラーによくあるスパイス感も強い。


今くらいの熟成度だと食中に合わせないと強すぎで、メルシャンのメルローのような頑強さがある。

エルミタージュのように熟成するとほどけていくかは分からないが、今すぐ開けて飲むなら、ラムを焼くかボロネーゼなど味が濃い目の料理に合わせないと受け止めてもらえない。


エルミタージュ同様、しっかり熟成させないと真価を発揮しないのだろうが、ポテンシャルが高いのはよく分かる。

しかもその割には値段が安いと感じるため、支持されるのも納得だ。

唯一の懸念はスクリューキャップな点で、この堅牢さで密閉度が高いと、相当長く熟成させないといけなそうな点だろうか。


ドレッドノートは私が買った値段より高い店でも売りきれているし、熱狂的なファンがいるのだろうと思う。

シラー好きにはローヌよりこちらを選ぶという人もいそうだ。

今のポール・ジャブレ・エネを選ぶなら、確かにこちらがいいかもしれない。


しかしローヌも進化していて、特にJ.L.シャーブのドメーヌものの緻密さ、セレクションもののコストパフォーマンスの高さは特筆に値すると思う。

どんどん競いあって、お互いに品質を向上させてほしいものだ。


このワインは、シラーloverにはぜひ試してほしい、『南半球のエルミタージュ』とも呼ぶべき素晴らしいシラーだ。


【Verygood!!!】