前回シャルドネを紹介した、南アフリカの作り手クリスタルム。
ピノ・ノワールとシャルドネで、エレガントなブルゴーニュ的なワインをつくる生産者だ。
2007年にウォーカーベイのヘルマナス地方、へメル・アン・アード地区に設立されたワイナリーだという。
ピーター・アラン・フィンレイソンが興したワイナリーだが、この地区にシャルドネとピノ・ノワールを植えた農家の三代目にあたるらしい。
そういえばクリスタルムのピノ・ノワールを飲んだのはずいぶん前で、当時とは価格の印象も違うし私自身の経験も増えた。
改めて飲んでみようと1本注文し飲んでみたが、ちょっとビックリするクオリティだった。
今のブルゴーニュの相場を考えると相当いいと感じたため、ケース買いをした。
買ったのはピーター・マックスというキュヴェで、値段は税前で5,500円を切っていた。
なんでも最初にブドウを提供した栽培家二人の名前を取って、名付けられたらしい。
今は違う栽培家のブドウを使っているらしいが、このキュヴェでは複数のヴィンヤードのブドウを使うことを信条としているとの事。
エレガントなピノ・ノワールで、今でいうと価格的には広域ブルゴーニュと村名との間くらいだ。
しかし、味やクオリティ的には村名やプルミエ・クリュと同格だと感じた。
それらのいいものになると、今や15,000円前後はする。
そのケースで買ったピーター・マックス ピノ・ノワールを改めて1本開けて、テイスティングしてみた。
なお輸入元はラフィネでヴィンテージは2022。
グラスはリーデルのヴィノムのピノ・ノワールを使用した。
【テイスティング】
ダークチェリー、ラズベリー、煮込んだストロベリージャム、ミントやルバーブ、赤黒っぽいベリー感。
シルキーなタンニン、しっかりとウッディだが炭っぽさがなく清澄、トーストしたオークの樽感、しっとりとした黒土。
ブラッドオレンジの果実味やその皮の苦味、ラズベリーティー、ハイビスカスのフローラルさ、クローヴ様のスパイス。
素晴らしくエレガントで、一日おいて歠むとタンニンが削ぎ落とされ、さらにエレガントさが増す。
今まで飲んだピノ・ノワールの中で、もっとも繊細でブルゴーニュを感じる。
ブラインドで飲んだら、2019辺りのヴィンテージのモレ・サン・ドニのプルミエ・クリュと言いそう。
時間が経過するとヴォーヌ・ロマネ的なニュアンスも出てきて、非常にブルゴーニュ的なピノ・ノワール。
熟成するとどうなるか想像がつかない部分が少しあるが、コルクもDIAM10を使用していて美しく熟成もしそうだ。
なにより、ピュアな果実味を味わえる段階のピノ・ノワールとしては相当優秀。
今時このクオリティのピノ・ノワールが、税前で5,500円を切っているというのはすごい。
まして、ブルゴーニュ以外のピノ・ノワールとなると、ここまで琴線に触れるものもそうはない。
クリスタルムが人気なのは大いに納得がいくし、さらに上位の違うキュヴェも飲んでみたい。
そう思いキュヴェ・シネマというシングルヤードのキュヴェの2021ヴィンテージを買ってみた。
価格的には税前で8,000円強なので上位キュヴェには違いないだろうが、シングルヴィンヤードとマルチヴィンヤードでは傾向が違う。
ウイスキーに例えると、シングルカスクと複数樽バッティングの違いみたいなものだろうか。
優劣ではなく、表現したいものが違うのだ。
この作り手がシングルヴィンヤードを作るとどうなるか、試してみるのが非常に楽しみだ。
しかし、このピーターマックスを大きく上回る感動がはたしてあるのか、疑わしいくらい素晴らしい。
完全にローテーション入りを果たした、素晴らしいピノ・ノワールだ。