シャンパーニュ、と名乗れるのは、フランスのシャンパーニュ地方で決められたつくり方をしたスパークリング・ワインだけだ。
シャンパンと呼ぶ人もいるし、それも正しいが私のブログではシャンパーニュと表記する。
シャンパーニュで使うのが認められているブドウは7種類あるが、3つの品種が栽培面積の99.7％を占める。
すなわち、ピノ・ノワール、シャルドネ、ムニエの3つ。
その限られたものを使いさまざまな味わいの違いが生み出される世界観は、スコッチのブレンデッド・ウイスキーに酷似している。
例えば、ウイスキーだとジョニー・ウォーカーは様々なウイスキーをブレンドしてつくる。
また、一口にジョニー・ウォーカーといっても様々な種類がある。
それによって使うウイスキーが変わり、様々な味わいが生まれるが、哲学は同じため味にもどこか共通点がある。
シャンパーニュもそれと同じだ。
大手メゾンにも様々なキュヴェがあり、使われるブドウの産地や比率で味わいが異なる。
しかし、共通しているハウススタイルは存在するし、各メゾンが独自の立ち位置とファン層をもつ。
また、ウイスキーは原酒を供給する傘下のモルト蒸溜所ごとに味わいが違う。
シャンパーニュもまた産地や畑、農家によりブドウの味が変わり、つくられるワインの味も変わる。
昨今ウイスキーでは、傘下のモルト蒸溜がつくるシングルモルトの人気が高まっている。
同様にシャンパーニュも、かつて大手に供給していた小規模なRM(レコルタン・マニュピュラン)が脚光を浴びている。
つまり、誤解を恐れずにいえば、シャンパーニュだけで、スコッチウイスキーの世界なみの広がりや奥行きがある。
それに、ウイスキー同様熟成という時間軸がさらに加わる。
先日セミナーに参加したサロンなどは、10年熟成して商品化される。
その後瓶内でも熟成していく。
昨年即位した英国のチャールズ三世には、マクロン大統領から生まれ年である1948年のサロンが贈られたという。
つまり最上のシャンパーニュは75年も熟成するのだ。
これを極めて行くにはウイスキー同様、一生を費やしてもたどり着けないのかもしれない。
そんな奥深きシャンパーニュの世界において、三つの品種のうちの一つであるシャルドネで、最上と言われるものがいくつかある。
そのうちの一つがル・メニル・シュール・オジェの地が生むシャルドネだ。
孤高のブラン・ド・ブランを生み出すサロンや、クリュッグのクロ・デュ・メニルもこの村のシャルドネだけを使う。
独特なミネラル感とシャープな酸が特徴といわれ、長期熟成に耐えうるシャンパーニュを生み出すグラン・クリュだ。
そのメニル・シュール・オジェにおいて、上の２つは特にラグジュアリーなワインで、値段もとんでもない額になる。
しかし、メニル・シュール・オジェのグラン・クリュのシャルドネを使ったお手軽なシャンパーニュも存在する。
それがこのベリー・ブラザーズ&ラッド(BBR)のブラン・ド・ブランだ。
BBRは、ユナイテッド・キングダム・キュヴェ(UKC)と銘打たれたシャンパーニュをいくつか展開している。
ブレンドでつくるUKCはモンターニュ・ド・ランスのグラン・クリュである、マイィの協同組合に委託する。
しかしシャルドネのみ使うブラン・ド・ブラン は、メニル・シュール・オジェにあるル・メニルという協同組合に委託しているのだ、
ル・メニルは約550の生産者からなる協同組合で、錚々たる大手メゾンにもブドウを卸している。
上質なブドウがとれる地域の協同組合だけに、そこでつくられるシャンパーニュはグラン・クリュだが財布にも優しい。
そこに委託し、ユナイテッド・キングダムの名を冠してしているだけあり、BBRのUKCのブラン・ド・ブランは味とコストのバランスが素晴らしい。
BBRが委託して味わいに関しても監修しているため、ル・メニルのプロパー品とは少し味が違う。
セールの時に買い込んで家で愛飲しているキュヴェだが、久しぶりに開栓しテイスティングした。
なお、グラスはザルトのユニバーサルを使用した。
【テイスティング】
しっかりとした硬質なミネラル、熟したホワイトグレープフルーツ、オレンジのマーマレード、焼いたブリオッシュの香り。
アカシアの花、ハチミツ、ライムゼスト、トニックウォーター。
クリーム、バニラ、ほんのりオーク、青リンゴの皮と果汁
しっかりとした酸、きめ細かい泡、上質なブラン・ド・ブラン。
食前酒としてはもちろん、様々な食事に合う食中酒としても活躍する。
ワイン消費大国である英国の名を冠した素晴らしきブラン・ド・ブランで、これが安く買えるだけでもBBRのセラー・プランに加入する甲斐がある。
