日本のワインが好きな人は、中央葡萄酒株式会社グレイスワインを知らない人はいないのではないか。

しかし、ウイスキーファンや一般の人はどれくらい知っているのだろう?


中央葡萄酒は1923年創業で100年を越える歴史をもつ、山梨県勝沼にあるワイナリーだ。

2014年に日本で初めて、デキャンター・ワールド・ワイン・アワードでゴールドメダル(金賞)を獲得した。

ウイスキー業界におけるイチローズモルトの立ち位置に似ている。


ちなみに、デキャンター・ワールド・ワイン・アワード(DWWA)は、デキャンターという評価誌が開催している。

デキャンターは英国の権威ある評価誌で、出品されるワインは世界最大の数を誇る。

グレイスが金賞を獲得した2014年は、15,000銘柄を越えていたらしく、金賞はわずか1%という狭き門だ。


金賞を獲得したワインは、キュヴェ三澤 明野甲州の2013ヴィンテージ。

日本の地ブドウである甲州種の素晴らしさを世界に認めさせたワインとして知られる。

2008年からは、美人醸造家としても知られる三澤彩奈さんが醸造責任者を務める。

キュヴェ三澤 明野甲州はその後も金賞を獲得し続け、今は三澤甲州と名前を変えた。


三澤甲州はグレイスワインの白のトップキュヴェで、価格も1万円を越える。

それでもすぐに売りきれる人気のワインで、私も2021を飲んだことがある。

さすがに和食とは抜群の相性で、鮎の刺身とこれ以上ないベストなマリアージュをみせてくれた。


その時に、赤のフラッグシップであるキュヴェ三澤も一緒に飲んだ。

これまた素晴らしい日本のボルドーブレンドで、世界的な評価の高い長野のメルロのワインとも、また違う個性のワインだった。

メルシャンやサントリーのメルロに比べたら、柔らかくてしなやかで女性的な印象を持った。


この『あけの』はそのキュヴェ三澤のセカンドラベル的なワインだそうだ。

『あけの』とは、自社管理の農場がある北杜市の明野という地名から名付けられている。

創業100周年にあたる昨年2023年、2020年のブドウをつかってリリースされたものだ。


このワインを試飲したら、これまたびっくりするクオリティのワインだった。

試飲したのはリゾナーレ八ヶ岳で、そこで最初に少量テイスティングした。

ちなみにリゾナーレ八ヶ岳は、サントリーの白州蒸溜所にも程近い、星野リゾートの施設だ。

ワインリゾートとしても知られ、地元のワインの紹介に力を入れていて、試飲も充実している。


そこで少量試飲して気に入り、150ml計り買いしたものをじっくりテイスティングした。

そのノートを記載する。


【テイスティング】

香りはカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロ主体のボルドーのよう。

口に含むとフレッシュなカシスやプラム、ほんのり出汁感や梅、野菜臭も少し、湿ったタバコの葉。

プルーンや枝付きレーズンなどの酸味のあるドライフルーツ、柔らかい赤土、土っぽさのあるビーツ。

カカオ比率高めのチョコレート、赤錆っぽいニュアンス、天然酵母由来の生の果実味、しなやかなタンニン。


ナチュール系のフレッシュなボルドーブレンドで、柔らかくしなやかで日本のワインらしい香味や出汁感がある。

ブドウ品種は、メルロ63%、カベルネ・ソーヴィニヨン28%、カベルネ・フラン8%、プティ・ヴェルド1%だそうだが、素晴らしいボルドータイプの赤ワイン。


価格的には私がみたのは税込み7,600円で、価格帯的にもまあまあ高い。

個人的にはこの価格帯だと、ボルドーで好きなものとどうしても比較してしまう。

クロ・デュ・マルキ2016や、ピション・コンテス・レゼルヴ2019、マルキ・ド・カロン・セギュール2018などだ。


しかし、そういうワインと比べても個性豊かで、立ち位置をしっかり持っている。

合わせる食事にもよるが、山梨のワインだけあり鳥もつ煮をはじめ、家の和食にはマッチするだろう。

長い期間熟成させるワインではないかもしれないが、もう少し熟成させれば違う表情も出てきそうだ。


日本のワインは品質の向上がめざましい。

リゾナーレ八ヶ岳で買えるワインの中でも、特に白ワインは素晴らしいものがたくさんある。

それに加えて、赤ワインでもここまで存在感があるものが出てきているのは、素晴らしいことだと思う。

日本ワインマニア以外にも巾広く知ってもらいたい。

そんなボルドーブレンドの、日本が誇るべき赤ワインだ。


【Verygood!!!】