ブルゴーニュのシャルドネからつくられるモンラッシェは、世界最高峰の白ワインの一つといわれる。
モンラッシェは、シャサーニュ・モンラッシェとピュリニィ・モンラッシェの2つの村にまたがるグラン・クリュ(特級畑)だ。
2つの村の名前はこの特級畑にあやかってつけられたため、村名も含めるとラベルにモンラッシェという文字が表記されたワインはかなり多い。
そのため、モンラッシェ違いで噛み合っていない会話を見かけることもあるし、誤解してる人を見かけることもある。
逆にいうとグラン・クリュのモンラッシェでなくとも、両モンラッシェ村から素晴らしいワインが産み出されている証だといえるだろう。
シャサーニュもピュリニィも、高級ワインを生み出す産地ではあるが、特にシャサーニュはクオリティに反して買いやすいワインを出すドメーヌも多い。
そんなドメーヌの一つがシャサーニュ・モンラッシェに拠点を置くドメーヌ、フィリップ・コランだ。
フィリップ・コランは名手と名高いミシェル・コラン・ドレジェの長男のドメーヌで、父から醸造設備を引き継ぎ、直系の後継ドメーヌと言われる。
飲み比べると弟のドメーヌ、ブリュノ・コランより、父のワインづくりを引き継いでいる味だと強く感じる。
また、フィリップ・コランは南アフリカでもワインをつくっている。
季節が真逆の南半球に位置する南アでワインをつくるため、ブルゴーニュと合わせ年に2回の仕込みが出きている事になる。
つまり倍の経験を積める事になるのだが、そのためか、よく飲んだ2014~2017年のワインはヴィニュロンとして円熟期を迎えている印象があった。
その割には縁あって安く手に入ったため、よく飲んだからかもしれないが、個人的にはミシェル・コランのワインより好みだ。
しかし、コラン一族の中では父は元より従伯叔父であるマルク・コランや、その息子であるピエール・イブ・コラン・モレに比べたら評価は低い印象がある。
しかし、人気ワインコミック『神の雫』では、マルク・コランのモンラッシェではなく、ミシェル・コランのシュヴァリエ・モンラッシェ2000が第五の使徒に選ばれている。
その畑は今は二人の息子が受け継いでいる。
私もフィリップ・コランは好きだが、人の評価はさておき、酒飲みとしては自分が好きな味の酒が安く手に入るほどありがたいことはない。
このワインはそのフィリップ・コランのワインで、シャサーニュ・モンラッシェのプルミエ・クリュ(一級畑)のワインだ。
畑は隣村のサン・トーバンに隣接する一級畑ショーメで、以前はショーメ表記だった。
しかし、2017からショーメにクロ・サン・タブドンというリューディー表記が追加されるものが出ている。
2017はブルゴーニュの白としては評価の高いヴィンテージで、個人的にもかなり好きな味わいだ。
そんな年だけに、2017年のフィリップ・コランは素晴らしいワインを産み出している。
このショーメ、クロ・サン・タブドンも例外ではなく、自宅で何本か開けているが素晴らしいワインだ。
そのワインを改めて自宅で開栓し、テイスティングしてみた。
【テイスティング】
大きめのグラスでテイスティングしたが、以前より熟成した香味だったため、細長い白ワイン用グラスでサーブ。
ホワイトグレープフルーツの果肉、その薄皮やワタの苦味、山の雪解け水のような静謐なニュアンス、川の石をなめたようなミネラル感。
さらっとした蜂蜜、バターを縫ったトースト、カシューナッツ、ほんのりフィノ・シェリー。
青リンゴ、クリームチーズ、水仙のようなフローラルさ、パイナップル。
ライムの酸 洋梨のタルト、塩味、オーク由来のバニラ。
良年である2017ヴィンテージのプルミエ・クリュの割に、熟成が少し進んでいるボトルの印象。
しかし、酸、ミネラル、香ばしさ、果実味、華やかさやクリーミーさが一体になった、素晴らしいシャルドネ。
ウイスキーに例えると、70年代のリフィル樽の長熟の東ハイランドやスペイサイドの味わいに似ている。
ベクトルとしては、1975ヴィンテージの度数が下がりぎみの長熟バンフなどに結構近いフレーバー構成だ。
シュサーニュ・モンラッシェらしい非常に好きな味の白ワインで、ケース買いしたのでまだたくさん飲めるのが嬉しい。
直近のヴィンテージは高くなったのもあり追えていないが、相場や味を考えたらまだ良心的な値段だと思う。
唯一、ドメーヌのフラッグシップであるグラン・クリュ、シュヴァリエ・モンラッシェは私が買った値段の3倍以上になっている。
2015と2017を2本ずつセラーで寝かせているので、特別な時に飲みたいと思う。
ドメーヌ本拠地だけあり、シャサーニュ・モンラッシェの魅力がつまっている。
そう感じるプルミエ・クリュだ。
【Verygood/Excellent!!】