年が明け、2024年となり令和も6年目になった。
今年2024年はスコッチウイスキーにとって、記念すべき年だ。
約200年前、増加の一途をたどる密造に業を煮やした英国政府が、新しい税制や公認蒸溜所制度を創設。
ジョージ・スミスがグレンリベットで、初めてその制度で公認を受けてから200周年の節目の年にあたる。
それをきっかけに公認蒸溜所制度を利用する蒸溜所が相次ぎ、『シングルモルトのロールスロイス』マッカランも創立200周年を迎える蒸溜所の一つだ。
二つのビッグネームから記念ボトルも出るだろうし、おそらく今年のジャパニーズ100周年のようにイベントも開催されるだろう。
その記念すべき年の始めに、蒸溜から半世紀経ったウイスキーを開栓しようと在庫を物色し、このウイスキーを選んだ。
それがこの1974蒸溜、29年熟成のボトラーズもののアバフェルディだ。
アバフェルディは、デュワーズがブレンデッドウイスキーの原酒確保のために、南ハイランドに建設した蒸溜所だ。
今はバカルディがオーナーとなっているが、このボトルの原酒が蒸溜された頃は、今のディアジオの前身であるDCLがオーナーだった。
そしてこのボトルはクーパーズ・チョイスでお馴染み、ヴィンテージ・モルト・ウイスキー社の子会社であるH&Iモルト・ウイスキー社のシリーズ、カスク&シスルコレクションで詰められている。
ちなみに、カスクはウイスキーを熟成させる樽を意味し、シスルはスコットランドの国花であるアザミを意味する。
そのため、ラベルには樽とアザミがあしらわれたトレードマークが描かれている。
ボトルスペックとしては、1974蒸溜2003年瓶詰の29年熟成で、アメリカの小売店Binny's Beverage Depot向けに詰められている。
ちなみにアメリカ向けだと容量が750mlとなるため、少し得した気分になる。
アルコール度数は46%で294本のアウトターンだから、おそらく少し加水したシングルカスクだとは思うが、ラベルにはその表記もカスクNo.もない。
古いボトルのためかウイスキーのデータベースサイト、Whiskybaseにも情報が多くは記載されていない。
これは輸入元がスリーリバーズの国内流通品で、確か目白にある世界的小売店、目白田中屋で買ったものだ。
買ったのは有楽町でアバフェルディが話題になっていた時期だったはずだから、たぶん10年くらい前だろう。
このボトルは飲んだことがないがスペック買いしたもので、その後barで出会うこともなかった。
他にも1974ヴィンテージのボトルで開ける候補はあったが、これを選んだのは単純に飲んでみたかったのが一番大きい。
そのボトルを開栓し、テイスティングしてみた。
【テイスティング】
厚みがあるドライな麦、それが変化したケルナーのような白ブドウ、さらっとした蜂蜜、水飴。
樹液っぼさ、ドライジンジャー様のスパイス、甘夏のワタ、ココナッツのコク。
少しミズナラっぽい白檀のような香木、バニラキャラメル。
煮込んだ黄桃のシロップ、ライトなオールドピートのスモーキーさ、桂皮やナツメグ、ブランデーケーキ。
厚みや熟成感は中庸でバランスがよく、余韻が長いクリアなウイスキー。
1991ヴィンテージのようなアバフェルディ味というより、モルティでドライな70年代半ばのディアジオっぽい味わい。
加水の物足りなさもなく、個人的にはかなり好きな味だ。
ブラインドで飲むと、クラガンモアやバンフ、ノースポートと答えそう。
しかし、クリアで雑味やオイリーさがないのがアバフェルディらしく、少しミズナラっぽい香木感もある。
それほど強くない樽感や味わいから、古樽で長く熟成したものではないかと思う。
今は熟成が短くても樽感が強いものが多く、30年前後の熟成の長いボトラーズものは、価格が跳ね上がる。
しかし10年くらい前までは、70年代蒸溜のこういう樽がボトラーズに流れ、安い値段で売られていた。
また、最初に製樽された年代はおそらくかなり古く、その木の樹齢ゆえなのか、たまにミズナラっぽい香りをもつものに当たる事がある。
香木感はミズナラ樽だけの特徴ではないということなのだろう。
余談だが、私がウイスキーを飲み出した当時、半世紀前に蒸溜されたシングルモルトといえば、1960や1961ヴィンテージだった。
ニューリリースも見かけなかったし、マッカランや1964のボウモアくらいスペシャルなものが多かった。
しかし、2024年から見た半世紀前である1974年蒸溜のウイスキーは、それに比べると今も対して珍しくない気がする。
1960年代に比べて1970年代は生産が多くなっていたり、長熟ブレンデッドが売れずに原酒がボトラーやブローカーに流れて、リリースが多かったためだろうか。
このアバフェルディも買った正確な値段は覚えていないが、確か2万代前半くらいだった。
しかし、味わいとしてはこの当時の酒らしい味わいで、スペシャルではないもののクオリティは高い。
1970年代前半蒸溜の長熟らしいウイスキーで、こういうのを飲んでウイスキーに傾倒していったため思い入れも強い。
それらを安く買えた時期に頑張ってストックしておいたが、本当によかったと思えるアバフェルディ。
こういうのを飲むと、今年出てくるリベットやマッカランの200周年のウイスキーにも期待したくなる。
新年1本目の開栓にふさわしいボトルだった。
【Verygood/Excellent!!!】