今やウイスキーもワインも価格が高騰しているが、毎日のように飲んでいる酒飲みとしては当然、価格は安い方がありがたいと思う。

特に今年は、歴史的な不作だった2020や2021が世に出たため、ブルゴーニュの価格が跳ね上がった。

特にグラン・クリュ(特級畑)は、文字通り高級ワインの代名詞となってしまった。

2022と2023年は豊作で少しは価格が落ち着く予感はあるが、一度上がると下げるのも難しいだろう。


それに対してボルドーは豊作が続いていたが、ブルゴーニュとは対照的に、2022や2023は不作となっているらしい。

これが引き金となって来年のプリムールの価格はおそらく上がり、それに引っ張られて市場在庫の価格も上がるだろう。

ここ10年のボルドーは、2014~2016、2018~2020年のビッグヴィンテージ三ヶ年を二つ擁し、価格も安く味もずば抜けていた。

ボルドーはブルゴーニュより飲み頃が少し先になるため、今から2014~2016を買い足すとあと数年でちょうどおいしく飲めるものが多いだろう。

安く手に入る今のうちに多めに買っておき、寝かせておくのが良さそうだ。


それに対して、両地と同様の銘醸地であるローヌのワインは、いまだ価格が安定している。

もちろん北部のエルミタージュに拠点を置くジャン・ルイ・シャーヴ、南部に拠点を置くシャトー・ラヤスなどは相当な上がり方をしている。

しかし、今や30万を超えようかというラヤスを除けば、クオリティの割にまだまだ安いと感じる。

それゆえ、中にはこの値段でこの味の酒が買えるのか、というお宝のようなワインも多くある。

数ヶ月前に3本購入したこのドメーヌ・デュ・ぺゴーのシャトー・ヌフ・デュ・パプ、キュヴェ・リゼルヴェ2019もそんなワインの一つだ。


ローヌ南部に位置するシャトー・ヌフ・デュ・パプは、北部のエルミタージュと並びローヌを代表する銘醸地だ。

シラー単一品種でつくる事も多い北部に対し、南部はグルナッシュ主体でブレンドして作る事が多い。

また、この作り手ドメーヌ・デュ・ぺゴーはロバート・パーカーが高く評価し、トップ・キュヴェのキュヴェ・ダ・カポは100点を何度も獲得している。

またワインコミックの金字塔『神の雫』でも、2000ヴィンテージが第三の使徒に選ばれている。

そのため、ダ・カポは1本5万以上の高値が付くし、超優良年しか作らないためリリースも少ない。

ダ・カポがつくられなかった年にリリースされるのがこのキュヴェ・リゼルヴェで、私が買ったこの2019ヴィンテージの価格は税抜で8,000円だった。

通常はもう少し高い印象があるため3本購入したわけだが、届いたものは正規代理店であるミレジムが入れたものだった。

熟成させる前提で買ったものだが柔らかさがあるワインで、早く開けてもおいしい印象がある。

飲んだことがないヴィンテージのため、3ヶ月ほど自宅のセラーで休ませ、そのうちの一本を開栓しテイスティングしてみた。


【テイスティング】

巨峰の果汁や皮、無花果、ダークチェリー、ドライローズ。

煙草の葉、カンパリ、煮出したローズヒップティー、若いレザージャケット。

しっとりとした羊羮、乾燥したローリエやブーケガルニ、ビーフジャーキー、黒胡椒のようなスパイス。

タンニンはしっかり目だがきめ細かく、いい酒が持つ厚みや品がある。


セパージュはグルナッシュが80%、シラーが6%、ムールヴェードルが4%、その他が10%だが、ブラインドならシラー比率が高いと感じそう。

熟成したら甘さと妖艶さと野性味が増しそうだが、凛とした今の姿でも充分に楽しめる素晴らしいキュヴェ。

パーカー氏の評価は味わいは好みが強く出ているため、高得点ワイン全てがいいわけではない。

しかし、品と格にいわゆる『いい酒』の真髄が詰まっていて共感する事が多いが、このワインもその典型だといえる。


たまにブルゴーニュしか飲まないという人もいるが、私はブルゴーニュだけではなく幅広く飲む。

全ての料理がブルゴーニュに合うわけではないので、合わせる食事を考えたらそれが理にかなうし、その方が愉しい。

このワインはシャトー・ヌフ・デュ・パプの魅力が詰まっているし、味を考えたら信じられないくらい安い。


熟成させた方が真価を発揮するワインだと思うため残る2本は熟成に回すが、このワインは今飲んでも幸せな気分にさせてくれる。

パーカーが100点を連発し、第三の使徒に選ばれる作り手なのは伊達ではない。

そう思える、素晴らしいシャトー・ヌフ・デュ・パプだ。



【Verygood/Excellent!!】