インナーヘブリティ諸島最大の島、スカイ島には1830年創業のタリスカー蒸溜所がある。
タリスカーは長らくスカイ島で唯一の蒸溜所だったが、ウイスキーブームに後押しされ、ついにスカイ島に新しい蒸溜所ができた。
実に190年ぶりの事だそうだが、それが2017年から稼働しているトルベイグ蒸溜所だ。
ビーテッドスタイルのウイスキーをつくるという話を聞き、スカイ島だしどんなウイスキーなのか飲んでみたいと思っていた。
そのトルベイグを2023年4月から、明石酒類醸造という会社が代理店として輸入する事になったらしい。
カナ表記だとトラベイグというものも目にするが、明石酒類醸造はトルベイグという表記を使っているため、それに倣うことにする。
国内で流通するものを見かけるようになったので、ついでのときに試しに1本買ってみた。
それがレガシー・シリーズのアルトグランというウイスキーのセカンド・リリースで、46%に加水されているボトルだ。
1stヴィンテージである2017年と、翌2018年に蒸溜されたもので、30樽のバレルで熟成させた原酒で構成されているという。
Whiskybaseをみると、アルトグランも色々なバッチがあるようで、ラベルや箱の情報から正確にどのバッチか特定できなかった。
資料によると4年半ほどの熟成ということのようで、まだまだ熟成が短いがビーテッドタイプならそれなりに仕上がっているのではないか。
また資料によると、トルベイグはWell-Tempered Peat(ウェルテンパード・ピート)という独自のピートを使うらしい。
それがどういうピートなのか、少し調べただけでは出てこなかった。
なお、ウイスキーのピートレベルを示す数値だが、ラベルによるとスピリッツの残留ピートは17ppmとの事。
これはタリスカーやスプリングバンクなどに近い数字だ。
上記のように情報はあるが、何はともあれ飲んでみないとどんなウイスキーかわからない。
このウイスキーを開栓しテイスティングしてみた。
【テイスティング】
ピートスモーク、わたあめのような甘さ、レモン果汁、パイナップル、淡くバニラ。
苦味のあるモカチョコレート、白ブドウ、海水やヨード、少しスピリティ。
乾燥した玉ねぎの皮、ジャガイモの茹で汁のようなフェインティなニュアンス、東ハトポテコの後味のような軽いクリスピーさ。
ココアパウダーのような苦味があり、飲み干したグラスからは収穫前の稲や田んぼのような香りがするが、アーシーなニュアンスは弱い。
余韻も短く樽感の少ないブレーンな若いウイスキー。
フルーティーさや甘さもあり、スペックよりもピーティーさを感じる。
加水ボトルなのもあるが、ボディの厚みはさほどないライトボディで、ボディだけだとカリラを彷彿させる。
将来的には期待が持てるかもしれないし、熟成期間を考えたら良くできてはいる。
しかし、如何せん一本飲み切るのは厳しく、夏場まで様子を見ながら最終的にはハイボールで消費する事になりそう。
新興のビーテッド全般にいえるが、熟成年数を考えたら飲めるし、フルーティーさや個性もほどほどにある。
しかし、価格的には税前8,000円とタリスカー10年の倍以上する。
そのため、次にこの蒸溜所のウイスキーを飲むのは熟成12年以上になってからでいいか、と思う。
ジャパニーズクラフトのピーテッドもそうだが、あくまでも私にとってだが、積極的に飲みたい理由が見出だせないウイスキーだった。