毎年11月の末に行われるボルドーの豪華な試飲会、ユニオン・デ・グラン・グリュ・ド・ボルドー(UGCB)。

今年2023年は11月20日に行われ、2020ヴィンテージのワイン達がお披露目された。

なんでも今回は1973年に初開催されてから50年の記念すべき年だそうだ。

日本で初めて開催され、大きなイベントに育ったという点は、ウイスキーライブと共通点がある。

今回は例年抽選になる夜のテイスティング会も当たったため、様々なワインを飲むことができた。





このUGCBでは一級シャトーは提供されないし、私の好きな二級のレオヴィル・ラス・カーズやコス・デストゥルネルも出てこない。
しかし、錚々たる二級以下の格付けシャトーが並ぶし、並べて飲むことでその年の出来や地域の傾向を掴むことができる。

去年の2019では個人的にはNo.1だと思ったシャトーで、今年の2020もベスト5に入ると思ったシャトーがある。
それがボルドー左岸最上のテロワールを持つポイヤックにある二級シャトー、ピション・ラランドだ。

ピション・ラランドは正確にはシャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランドという、かなり長い名前を持つ。
元々はピション・ロングヴィルというシャトーが二つに分かれた経緯があり、分かれたもう一方がシャトー・ピション・ロングヴィル・バロンだ。

今はフラッグシップのクリスタルを擁する、シャンパーニュのトップ・ブランド、ルイ・ロデレールが所有する。
しかしこのシャトーの名声を高めたのは、1978年からオーナーとなったランクサン夫人だという。
もとは一つだったピション・バロンが、その名の通り筋肉質で男性的なワインであるのと対照的に優美で女性的だと評される。
ちなみにバロンは男爵、コンテス・ド・ラランドはラランド伯爵夫人を意味する。

『ポイヤックの貴婦人』という呼び名を持ち、五大シャトーの一つである一級のシャトー・ラトゥールに隣接する。
一級に迫ると言われるスーパー・セカンド(超二級)の一角を占める、トップ・シャトーだ。
私が飲んだ中では特に2019ヴィンテージは優美で、そこに出展したワインの中で圧倒的な存在感を放っていた。

最近、ある店のセールでその2019ヴィンテージのピション・ラランドのセカンド・ラベルが安くリストに載っていた。
セカンド・ラベルとは、ファースト・ラベルに使うブドウを選果する過程で、基準に満たなかったものを使うなどした、一ランク下がったワインだ。
しかし、そのために価格も安く、早めに開栓して飲む場合はファーストより仕上がっている事が多く、いい面もある。

このピション・ラランドのセカンド、ピション・コンテス・レゼルヴ2019は、税前で5,000円を切るプライスだった。
その価格であの2019のファースト・ラベルを彷彿させる味ならありがたい。 
そう思い飲んだことがないワインだったので一本だけ購入し、開栓してテイスティングしてみた。

【テイスティング】
カシス、ブラックベリー、黒ブドウの皮、ドライイチジクやプルーン様のドライフルーツ、黒蜜。
スミレの花、煮詰めた梅肉、少しヨード、バニラビーンズ、細かく挽いた黒胡椒、微かにクミン。
甘草、ビロードのようにキメ細やかで滑らかなタンニン、針葉樹。
ミルクチョコレート、滑らかな漉し餡、余韻は短め。

甘味と柔らかさ、妖艶なフローラルさに感銘を受けた2019のピション・ラランドの味が記憶に甦る。
それを少しスケールダウンし余韻を短くし、飲み頃感を出した感じ。
こう書くと格落ちしたイメージになるかもしれないが、税前5,000円以下で買えるワインとしては最高峰だと思う。

このワインのセパージュが気になり、いつもデータを拝見するプログを見てみた。
そこにはカベルネ・ソーヴィニヨン71%、メルロー23%、カベルネ・フラン6%となっている。
しかしこれは同年のファーストラベルと全く同じだし、味的にも例年の割合からもメルローの比率はもっと高いのではないかと思う。
弘法にも筆の誤りで間違って記載したのだろうか。
このシャトーは左岸の中でも、特にメルローのクオリティが素晴らしいと思う。
それがこのシャトーの独特な個性を産み出している。

最近、もう一つの片割れの方、ピション・バロンのセミナーを受けたが、そこでは2019のセカンドラベル、レ・グリフォン・ド・ピション・バロンが提供された。
比較すると圧倒的にピション・コンテス・レゼルヴの方が好みだし、ヴィンテージによってはファーストのピション・バロンすらをも越える。

ちなみに、私が買ったのは老舗の酒屋の並行輸入品で、他にも並行輸入をしているショップでは比較的安めに手に入る。
それのクオリティを確かめてみるのも一興だと思うので、次はそちらを試してみようと思う。

このセカンドラベルは、毎年かは分からないが少なくとも2019はファーストラベルと同ベクトルなのが確認できた。
ウイスキーでいうと、70年代蒸溜の長熟シェリーのグレン・グラントが好きな人は試してみると面白いと思う。
2019というポイヤックのグレートヴィンテージの良さが低価格で味わえ、ピション・ラランドの個性も楽しめる素晴らしいワインだ。

【Verygood!!!!】

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