1698年創業の英国のワイン&スピリッツ商ベリー・ブラザーズ&ラッド(BBR)。
故エリザベス2世と現国王のチャールズ3世から王室御用達の勅許状(ロイヤルワラント)を授けられている名門だ。
そのBBRは2023年には創業325周年を迎えた。

ワインではいくつか325周年の記念ボトルがリリースされていて私も既にいくつか購入したが、ウイスキーもボトリングされるという。
それが1999ヴィンテージのラフロイグで、カスクNo.4200のシングルカスクで238本のアウトターン。
23~24年の熟成年数で、アルコール度数が43.8%とスペックの割には少し下がっている印象を受ける。
熟成樽についての表記はないが、テイスティングノートとアウトターンから、リフィルのバーボンホグスヘッド辺りではないかと思われる。
また、いただいた案内の冒頭には、このような一文が記載されている。

蒸留所の熟成庫で、テイスティングしていると、不思議なことに1つの樽に突然光が指すことがあります。
そのような時こそ、樽の最も輝く理想的な瞬間を見つけること出来る私たちに課せられた使命であると感じます。
そして、その特別な樽を数年に渡り繰り返しテイスティングすることで、ボトリングに最適な熟成年数を知ることが出来るのです。
私たちは、この樽をやはり数年の間追跡して来ましたが、言葉には言い表すことの出来ない“Serendipityセレンディピティ(思いがけない幸運な出会い)”によって この樽の素晴らしいピークに出会い、私たちの記念すべき創立325周年と重なったのです。』

要するに後光が射しているようなスペシャルな樽にめぐり逢い、数年にわたり観察し325周年と樽のピークが重なったため、満を持してリリースするという事だ。
BBRのラフロイグ1998ヴィンテージはいい樽が多かったが、1999はWhiskybaseをみる限り初出だ。
しかも1999もラフロイグはいい印象がある上、BBRスピリッツバイヤーのテイスティングが以下の内容で、度数も下がっているため期待したくなる。


【Tasting Note by Rob Whitehead 】
洗練されたピートスモーク、甘美なパイナップル、石炭のすす、マンゴーが完璧なバランスで現れる。

ライチ、アプリコット、港のロープ、エンジンオイルなどが後から後から押し寄せて来て、複雑な香りがグラスから華立つ。

味わいは、完璧な落ち着きと気品で、香りからもたらされる期待に応え、見事なピートスモークを備えた熟成感と穏やかなトロピカル・ノートによって美しく滑らかに和らげられ、魅惑的な体験を提供してくれる。

ほのかなバニラ、スパイス、焚き火の灰、すすが余韻に穏やかにいつまでも残る。

【Rob Whitehead, Spirits Buyer, Berry Bros. & Rudd (November 2023)】

Vat抜で£650と熟成20年超のアイラのシングルカスクとはいえ相当高額だが、好きそうな味でかつ、BBRの周年記念ボトルのため1本注文した。
おそらくエクセプショナルカスク以上のスペシャルなクオリティだと思ったからだ。

今までBBRから出された事がない1999のラフロイグは、どこかに樽売りされたのかもしれないし、元々なかったのかもしれない。
しかし、あるBBR所有の樽が頭をよぎった。

かつて、1992のスプリングバンク蒸溜所表記のロングロウを日本向けに、BBRから代理店であるウィスク・イーが詰めた事があった。
シェリー樽の素晴らしいロングロウで、今でも語り草になっているスペシャルなボトルだ。
BBRは樽を一つしか所有しないということはあまりない。
1994に代表されるボウモアのように、シスターカスクがあって、他の国向けなどで出てくるかと思われたが、シェリーカスクについては今のところその一樽限りだった。
バーボン樽のものは同ヴィンテージであるが、かなり味が違う。

もしかしたら、このラフロイグもそんなスペシャルな樽の一つではあるまいか?
もしそんな樽だったら、買わなかった事を後悔しそうなので購入に踏み切ったわけだ。

ちなみに、スピリッツバイヤーがお馴染みのダグ・マクアイバー氏ではなく、ロブ・ホワイトヘッド氏になっている。
HPによると2006年からBBRで働き始め、2010年に史上最年少でスピリッツバイヤーになった人物らしい。
テイスティングノートは非常に分かりやすくイメージしやすいので、彼が選ぶウイスキーにも今後注目していきたい。