ワインを飲み始めた頃、自分では味の違いが分からないだろうな、と思っていたのがスパークリング・ワインだ。

しかしじっくりと飲み込んでいくと、ウイスキー同様ものによって味には大きな違いがあり、相当に面白い。

特にスパークリング・ワインの王者、フランスはシャンパーニュ地方でつくられるシャンパンは、奥が深すぎる。


シャンパンは基本的にはピノ・ノワール、シャルドネ、ムニエという3つの品種でつくられるが、その割合により味が全然違う。

一般的にはブレンドしてつくる事が多いが、品種を限定してつくられるものもある。

中でも白ブドウであるシャルドネだけでつくられる白シャンパンは、『ブラン・ド・ブラン(白からつくる白)』と呼ばれる。

それに対して、黒ブドウであるピノ・ノワールとムニエだけでつくられた白シャンパンは『ブラン・ド・ノワール(黒からつくる白)』と呼ばれる。


またシャンパンは、ブドウが産み出される村によって味の傾向が違うし、村によって格が決まっていてそれによっても味が違う。

319の村のうち17村がグラン・クリュに指定されているが、やはりグラン・クリュ(特級畑)のブドウを使用しているという触れ込みのものには、いいものが多い。

仮に複数の村のブドウを使ったとしても、グラン・クリュのブドウ100%であれば、ラベルにグラン・クリュと表記できる。


最近、試飲販売会でエグリウーリエという小規模生産者のトップキュヴェである、アンボネイ グラン・クリュ ミレジムというシャンパンを飲んだ。

アンボネイはブドウがつくられるグラン・クリュを生み出す村の名前、ミレジムとはヴィンテージを意味し、それが入った単一年のブドウを使っているという事を表す。

ものすごくうまいシャンパーニュで、割引もありクオリティを考えたら今時そうない値段だったため、頑張って3本買った。


そのキュヴェは詳しくは知らなかったので調べたら、私が飲んだのは2011ミレジムだったが、2008のものは小規模生産者のシャンパンで、初めて100点満点を取ったというワインだった。

また、エグリウーリエはレ・メイユール・ド・ヴァン・フランス(旧クラスマン)という評価誌で、これまた小規模生産者初の三ツ星をとっている作り手だ。

ちなみに全シャンパーニュの生産者5,000弱で三ツ星と認められた作り手は9社のみだ。


アンホネイは、シャンパーニュはモンターニュ・ド・ランス地区にある村で、作付けの80%程がピノ・ノワールで、ピノ・ノワールの銘醸地として知られる。

エグリウーリエはここに拠点を置いていて、最も高価なシャンパンの一つである、クリュッグのクロ・ダンボネ(Clos d'Ambonnay)はその名の通り、アンボネイのブドウを使用している。


そんなアンボネイだが、エグリウーリエのアンボネイを飲んだ後に、自宅のセラーにある同じ村のブドウを使ったシャンパンを開けた。

それがこのアンリ・ビリオのグラン・クリュ アンボネイ キュヴェ・トラディションだ。


アンリ・ビリオもエグリウーリエ同様、レコルタン・マニピュラン(RM)と呼ばれる、栽培から醸造まで手掛ける小規模生産者だ。

畑仕事を大事にしていて、ワインの最先進国の一つ、英国が主要なマーケットだという。

良心的な値付けながら、スタンダード・キュヴェであるこのトラディションでも、アンボネイのグラン・クリュのブドウを使用している。

使うブドウの品種はピノ・ノワール75%、シャルドネ25%で、リザーブワイン(ヴァン・ド・レゼルブ)の比率が高いのが特徴との事。


『神の雫』でも取り上げられた事があるらしいが、それほど高くなったり入手困難になったりしておらず、ネットショップで普通に買える。


飲んで気に入り家でよく飲んでいるワインだが、ストックしていた最後の一本をこの機会に開けてみた。

このロットのデゴルジュマン(澱引き)は2021年11月8日、ドサージュは8g/L。

輸入元は豊通食料の正規輸入品。

同じ日のデゴルジュマンのものは二本目で去年の年末に開けて以来。


色はほんのりピンクがかったプラチナゴールド。

青リンゴや洋梨のプレッシュな酸、ピノ・ノワールらしいチャーミングな赤いベリー、ハチミツをかけた熟した白桃。

骨格のしっかりしたミネラル、ブリオッシュ香、クリーミーな酵母感、フロマージュブランのようなフレッシュチーズ。

スパイス感はカルダモンのようでほんのり緑がかっていて、きれいな酸やキメ細やかな泡が美しい。

アンボネイらしい味わいの素晴らしきシャンパーニュ。


エグリウーリエの後に飲むと、スケール感や緻密さは違えどアンボネイらしさは確かにあると感じる。

エントリーキュヴェなので税前5,000円弱で買ったものだが、その価格帯のワインなのにかなりレベルが高い。

熟成ポテンシャルもありそうだが、おいしくて安い使い勝手の良さからつい早飲みしてしまう。

シャンパンもどんどん価格が上がっているため、安く買えるうちにと思い追加で購入した。


アンボネイを手軽に味わいたいならお勧めできるワインで、幅広い層が楽しめるピノ・ノワール主体のシャンパンだ。


【Verygood!!!】