ワインにはウイスキーと違い格付けがある。
どの要素で格付けするかは地域で異なるが、最も有名であろうボルドーはメドックの格付けは、生産者(シャトー)で格付けをする。
それに対して、ブルゴーニュやシャンパーニュは畑で格付けをする。
ブルゴーニュの場合、上から特級畑(グラン・クリュ)、一級畑(プルミエ・クリュ)、村名畑(ヴィラージュ)、広域地方名畑(レジョナル)となっている。
ブルゴーニュでは、赤ワインはピノ・ノワール、白ワインはシャルドネという単一品質でワインを作る。
もちろん例外もあるが、ここでは割愛する。
ブルゴーニュの最上のピノ・ノワールは、コート・ド・ニュイと呼ばれる地区で作られている。
よく知られる村名アペラシオンは、北からジュヴレ・シャンベルタン、モレ・サン・ドニ、シャンボール・ミュジニィ、ヴージョ、ヴォーヌ・ロマネ、ニュイ・サン・ジョルジェの6つだろう。
しかし、ジュヴレ・シャンベルタンのさらに北には2つの村名アペラシオンが存在する。
一つがフィサン、そしてフィサンの北に位置するコート・ド・ニュイ最北の村名アペラシオンが、マルサネだ。
マルサネといえばロゼのイメージが強く、私は今までそんなに積極的に飲んで来なかった。
しかし、地球温暖化の影響でブドウ栽培の北限は徐々に押し上がっている。
日本でも山梨や長野が生産の中心だったが、今は北海道のブドウが注目されている。
ブルゴーニュのドメーヌ・ド・モンティーユは、北海道のポテンシャルに着目し、函館にワイナリーをつくっているくらいだ。
マルサネに着目したきっかけはシャルル・オードワンという作り手のワインを飲んだことだった。
非常に凝縮感のあるピノ・ノワールで、各方面から評価が高く、期待のライジング・スターとして広く知られている。
それゆえシャルル・オードワンのワインは、プルミエ・クリュ格付けの畑を持たないマルサネとしては価格もそれなりにする。
とはいえ単一区画の村名畑と考えたら、ブルゴーニュ・ルージュくらいの価格なので人気なのだろう。
しかし、個人的にはもう少し安くてクオリティの高いマルサネはないだろうか、と思っていたところにハマったのが、パトリック・マロワイエという作り手のワインだった。
初めに飲んだのは2019年の村名ジュヴレ・シャンベルタンのワインだ。
ルー・デュモンの仲田晃司さんを手伝っているステファンという若者がつくっているワイン、という触れ込みだが、これがめっぽういいらしいと聞いて一本試した。
確かに素晴らしいワインで、冷涼な地域で作られた印象のクラシカルなジュヴレ・シャンベルタンで味もコストパフォーマンスも素晴らしい。
聞けば実家のマルサネのドメーヌでつくっているらしく、生産量が極少量のため他のドメーヌも手伝っているらしい。
インポーターに他のワインは入れてないか確認したら、マルサネのオー・グラン・バンドーと村名マルサネがあるという。
今どき2017ヴィンテージが税込4,000円を切っていたので2本買ったが、おいしくてすぐに2本とも飲んでしまった。
聞けば2019辺りから完全に代替わりして、いずれドメーヌ名もステファン・マロワイエに変わるかもしれない。
マルサネではいち早くオーガニックの栽培を開始し、オー・グラン・バンドーの畑では60年以上も農薬は使われていない。
耕作にも機械を使わず、自然酵母を使って発酵させ、瓶詰め時のSO2も少量の添加にとどめている。
ピュアで凝縮感があり、コート・ド・ニュイの系譜に連なる味わいの素晴らしいワインで、生産量がもう少し増えてくれば期待の作り手として取り上げられることも増えるだろう。
マルサネは今プルミエ・クリュを申請しているそうだが、シャルル・オードワンにしてもパトリック・マロワイエにしても、そうなるとこのクオリティなら価格も上がってしまうにちがいない。