先日いい評判を聞いた、1993ヴィンテージのクラインリーシュのあるボトルを飲みにBarに行った。

1993ヴィンテージのクラインリーシュはうちでも開いているし、いくつものボトルを飲んでいる。

私の感覚だと好きな1972や1982などとは味わいが違う印象のヴィンテージだが、熟成が延びてどう変わるかをみてみたかったのだ。


結論をいえば熟成が延びた1993ヴィンテージのクラインリーシュという印象で、いいボトルではあったがやはり1982の同熟成年のクラインリーシュなどとは違う個性のウイスキーだった。

個人的には、上記のように熟成が延びてもヴィンテージの特徴は維持される傾向があり、熟成年以上に重要なファクターだと思っている。


そういう意味では最近、気になるニューリリースの中に、ボウモアの2000や2001ヴィンテージの熟成20年超のボトルがある。

ボウモアの2000年や2001年は90年代の流れを汲んでいる優良ヴィンテージで、熟成が短いものでも個人的に好きな味わいだ。

アイラモルトの高騰もあり、価格的にはおいそれとは手が出なくなっているが、好きなヴィンテージなので見かければ飲むようにしている。


まだまだ出てくるだろうと思っていたところ、高くて買えなくなったため、2000年代は1990年代ほどは手持がない。

しかし、今いくつか家で開いているものを飲み比べ、改めて2000年代の特徴を確認したい。



■2000ヴィンテージ ミレニアムディスティレーション シェリーカスク 約3年 61.6% アベイヒル


3年熟成、ボトリングから約20年経っている2000ヴィンテージのボウモア。

開けて飲んだ印象は、熟成の長いウイスキーが多かった当時に短い熟成で出されただけあり、特徴がよく出ていて仕上がりが良かった。

樽の影響が少ないため、より原酒の酒質が分かりやすいのではないか。

そう思い改めてテイスティングしてみた。

 

【テイスティング】

アルコールの刺激、熟したホワイトグレープフルーツ、その皮や種、淡いがパッションフルーツのニュアンス、デンプン感がある。

アロマティックな白ブドウの果汁、ミントのグリーンなニュアンス、グレープシードオイル、タールっぽいピートスモーク、潮風。

アフターにはプルーフの刺激、タバコの葉、樹脂やホワイトチョコレート、エスプレッソの苦味。


熟成3年とは思えない仕上がりで、ボウモアらしさもよく出ている面白いボトル。

90年代的なニュアンスがあるが、グリーンな印象とアロマティックな白ブドウ感が特徴的。


【Good/Verygood!】


■2000ヴィンテージ 2000.12.4ー2013.9 12年 カスク&シスルコレクション 57.3% ハイランド&アイランズ スコッチウイスキー社


クーパーズ・チョイスでお馴染み、ヴィンテージ・モルト社の関連会社、H&Iスコッチウイスキー社のカスク&シスルコレクションのボウモア。

ちなみにカスクは樽の事だが、シスルとはスコットランドの国花アザミの事だそうだ。

同社の代表ブライアン・クルック氏はボウモア蒸溜所に20年以上在籍しただけあり、いい樽をセレクトしている印象。

飲んだ当時気に入り3本買っていたボトルで、Barでも評判が良かった記憶がある。

これも改めてテイスティングしてみる。


【テイスティング】

ミンティアのタブレット、ホワイトグレープフルーツ、フローラルな白い花のニュアンス。

ヨードの汐感、岩塩、グレープシードオイル、バニラクリーム。

ルーサンヌの白ワイン、ブドウの葉、グラッパ、淡くパッションフルーツ、緑の山椒のようなスパイス、ほんのりすいた紙感。

ホワイトチョコレートや樹脂、ピートの苦味、モカチョコレート、パイナップル。


【Verygood!!】


並べて飲むと同ヴィンテージのこの2本は、フレーバー構成がかなり似ている。

この2本だけで断定するつもりはないが、このヴィンテージに特徴的なのは、グレープフルーツに加わるアロマティック白ブドウ感やミント感、グレープシードオイルのようなオイリーさではないかと思える。

バーボン系の樽は比較的さらなる熟成後の姿が想像しやすいし、シェリー系の樽でもこのフルーティーさは失われないように思う。
今出ると20年を越える熟成となり高額化していて手が出しづらいが、ハズレが少ないヴィンテージではないかという印象。
1990年代のいい流れを汲んでいるヴィンテージだ。


■デビルズカスク 10年 スモールバッチリリース2 アメリカ流通品 1stフィルシェリーカスク 56.3% オフィシャル

2013~2015の3年間、スモールバッチでリリースされたオフィシャルの10年熟成のシェリーカスク、デビルズカスクのバッチ2。
1stフィルカスクス表記で色も濃いため、リリース当時はかなりコッテリとしていた印象がある。
このバッチ2は2014リリースのため、逆算すると2004年前後の蒸溜で、ボトリングから約9年、開栓からも約1年が経過している。
カンパリアメリカが輸入したアメリカ流通品で容量は750mlの仕様。
カスクストレングスとおぼしきアルコール度数は56.3%のボトル。
これを改めてテイスティングしてみた。

【テイスティング】
甘やかなシェリーカスク、オレンジマーマレード、キャラメリゼしたクルミ、焼いたオーク。
ミルクチョコレート、アイラ独特の炭のようなビート、グレートヴィンテージの若いカベルネ・ソーヴィニヨン、名品に出るレザー感。
かすかに紙感、赤い果実のドライフルーツ、ミルキーなコク、クローヴ様のスパイス。
深くローストしたコーヒー、使いこみはじめたマホガニーの家具、余韻はクリーミーで甘味と苦味が一体となっている。

シェリーの支配から抜け出し、フルーティーなニュアンスが強まって飲み頃感が出ている。
シェリー樽は山崎のボタ・コルタのようなクラシカルなスパニッシュオークっぽさ、またアメリカンオーク的なニュアンスもあり複雑。
甘さはあるがペドロヒメネスというよりオロロソ樽のニュアンスが強めで、シェリー由来かヴィンテージ由来か少しの紙感があるが、樽にマスクされ紙に敏感な私でも気にならない程度。
様々なフレーバーが馴染んできていて悪いところがなく、重厚さも複雑さもあり相当うまい。

当時10年熟成としては高価な印象があったが、いい樽を惜しげもなく使ったのだろう。
今考えるとこの味わいならとても安く感じるし、アイラは熟成が延びると失うものもあるため、ある意味完成されたボトルだと思う。
これを手掛けたレイチェル・バリーは、やっぱりすごい人なんだと再認識した。

【Verygood/Excellent!】

デビルズカスクはヴィンテージの特徴うんぬんの話ではなく、短い熟成期間であるが、スペシャルなシェリーカスクで仕上げにかかったオフィシャルの逸品という印象。
リリース当時から時間経過でよくなるだろうという味ではあったが、オフィシャルの限定品のシェリーカスクの中でも相当レベルが高い。

2000年代も2001、2002、2003位まではヴィンテージで追いかけていたため、いくつかは手持ちがある。
デビルズカスクの仕上がりが圧倒的だったため、中途半端に終わったヴィンテージについての考察は、またの機会にまとめてみたい。