先日、Barでウイスキーを飲んでいたときに、こんな質問を受けた。
『今まで飲んだグレンスコシアで一番おいしかったのってどのボトルですか?』
その時にグレンスコシアを飲んでいたから、何気なく聞かれたのだと思うが、これが結構むずかしい質問だった。
そういえば、グレンスコシアで突き抜けておいしいボトルってあったっけ?と思い返したが、なかなか出てこない。
印象的だったのは、自宅で開けて楽しんだ1972ヴィンテージのウイスキーエージェンシーのプライベートストック。
https://www.whiskybase.com/whiskies/whisky/19435/glen-scotia-1972-twa
あとはその時に飲んでいた1977のメモリアル・オブ・スコットランドツアー。
https://www.whiskybase.com/whiskies/whisky/82907/glen-scotia-1977-ac
そしてウィームスの1991ストロベリーガナッシュ。
https://www.whiskybase.com/whiskies/whisky/34801/glen-scotia-1991-wy
最近のヘビーリーピーテッドだと、キャンベルタウンピクチャーハウス100周年のレジェンド・オブ・スコシア辺りだろうか。
https://www.whiskybase.com/whiskies/whisky/62187/glen-scotia-10-year-old-picture-house
改めて見返してみても、どれもスコアはパッとしない。
超人気蒸溜所であるスプリングバンクを擁するキャンベルタウン地区の蒸溜所なのに、グレンスコシアはかなり影が薄い。
名前からしても、スコットランドを意味するスコシアとウイスキー蒸溜所にありがちなグレンを合わせてつけられている。
アメリカでわかりやすい名前にして売っていこうと思ったのだろうか?
1832年創業と、スプリングバンクの設立から4年後にできた歴史ある蒸溜所だが、オーナーチェンジや閉鎖や休止を繰り返している。
今はロッホローモンドに買収され、中国系の投資会社がオーナーになったからかブランドを刷新し、シングルモルトとして力を入れ、生産は安定しているように見える。
しかし、グレンスコシアとブラインドで回答する人をあまり見たことがないし、そもそも出題する側もあまり出さないのではないか。
一言で表せるような特徴的な蒸溜所ではない印象がある。
そんなグレンスコシアだが、うちにはいつ買ったかあまり覚えていない、長期熟成のボトルが2本ある。
多分海外オークションで送料を安くするために落札したものではなかったか。
両方ともイアン・マクロード系列のボトルで、ラムバレル、30年近い熟成という共通点がある。
スプリングバンクと比較してキャンベルタウン地区の特徴がわかれば楽しいかも、と買った記憶があるが確かかなり安かったのだ。
そのうちの一本、イアン・マクロードの子会社ウィリアム・マックスウェルのダンベーガンラベルでボトリングされた1975ヴィンテージを開けた。
スペックは熟成29年で、カスクNo.689番のラムバレル、アウトターンは210本でアルコール度数43.3%とかなり度数は下がっている。
海外オークションで買った記憶があるが、裏にはスリーリバーズのシールが貼ってある。
同じラベルの1969のスプリングバンクは大好きなボトルなので、なんとなく縁起がいいこのボトルをテイスティングしてみた。
【テイスティング】
麦芽のモルティな甘味、カンロ飴、埃っぼさ、アロエっぽいグリーンなニュアンスがある。
オークの味わいはしっかり目で、バニラ様の甘さ、微かに鉛筆の削りカス、カルダモンのようなスパイス。
度数の割にはアタックもしっかり目の印象で、長くはない余韻にはライオネスコーヒーキャンディやバタースコッチ。
ラム感は確かにあり、舌の上に残る少しの潮っ気、染み渡るような滋味深さのあるモルティなウイスキー。
派手さはないし、潮っ気も露骨にあるわけではないが、刷新できずに使い古されたであろう古樽で長く熟成された時間の恩恵を受けたグレンスコシア。
良くも悪くもその辺りが70年代っぽさではないか。
刷新された樽によって短い熟成でもパンチのある味わいに仕上げた昨今のウイスキーとは、対極にあるといっていい。
ロックも似合いそうな味わいで、試してみるとよりホワイトラム感が出て、ぼんやりした印象が引き締まった。
飛び抜けたうまさではないが、WBCのチェコ代表のようなグッドルーザー感があるグレンスコシア。
間違っても高値で買うウイスキーではないが、こういう素朴で垢抜けていないのもスコッチウイスキーの魅力ではないかと感じる、そんなボトルだ。